退職を考え始めると、「退職後の給付はいくらもらえるのか」「何日分受け取れるのか」が気になりますよね。

雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)は、離職前の賃金から計算する1日あたりの金額と、年齢や被保険者期間、離職理由で決まる給付日数によって受給額が決まります。この記事では、失業保険の計算方法を3つのステップで整理し、計算例と金額が変わる条件もあわせて解説します。

この記事のポイント

  • 受け取れる総額の目安は「基本手当日額×所定給付日数」で考えます。
  • 基本手当日額は、離職前6か月の賃金から求めた賃金日額に、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)の給付率を掛けて計算します。
  • 基本手当日額には年齢区分ごとの上限額があり、毎年8月1日に見直されます。
  • 所定給付日数は、離職時の年齢、被保険者期間、離職理由などによって90日〜360日の間で決まります。
  • 実際の金額と日数は、ハローワークが受給資格を決定する際に確定します。

失業保険の受給額は「基本手当日額×給付日数」で決まる

失業保険の受給額は、1日あたりの金額である「基本手当日額」と、基本手当を受け取れる日数である「所定給付日数」の2つで決まります。

受給額の目安=基本手当日額×所定給付日数

ただし、これは所定給付日数をすべて受け取った場合の上限の目安です。途中で再就職した場合や、受給期間(原則として離職日の翌日から1年間)を過ぎた場合は、残りの日数分は基本手当として支給されません。

計算は、次の3つのステップで進めます。

  1. 離職前の賃金から「賃金日額」を計算する
  2. 賃金日額に給付率を掛けて「基本手当日額」を計算する
  3. 年齢・被保険者期間・離職理由から「所定給付日数」を確認する

ステップ1:賃金日額を計算する

ハローワークの案内では、賃金日額は、原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割って算出します。

賃金日額=離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計÷180

賞与など、毎月きまって支払われるもの以外の賃金は含まれません。たとえば、離職前6か月の賃金が毎月30万円だった場合、賃金日額は「30万円×6か月÷180=1万円」です。

ステップ2:基本手当日額を計算する

基本手当日額は、賃金日額に給付率を掛けて計算します。給付率はおよそ50〜80%(60歳〜64歳は45〜80%)で、賃金が低い人ほど高い率になる仕組みです。

賃金日額ごとの給付率(令和8年8月1日から)

厚生労働省が示している計算式をもとに、30歳以上45歳未満の人の場合を整理すると次のとおりです。

賃金日額給付率基本手当日額
3,203円以上5,480円未満80%2,562円以上4,384円未満
5,480円以上13,490円以下80%〜50%(賃金日額が高いほど低くなる)4,384円以上6,745円以下
13,490円超16,540円以下50%6,745円超8,270円以下
16,540円超―8,270円(上限額)

80%〜50%の区間は、次の計算式で求めます(30歳未満、45歳以上60歳未満も同じ式です)。

基本手当日額=0.8×賃金日額-0.3×{(賃金日額-5,480)÷(13,490-5,480)}×賃金日額

60歳以上65歳未満の人は、給付率の幅が45〜80%となり、計算式も異なります。年齢区分ごとの計算式は、厚生労働省の資料で確認できます。

基本手当日額の上限額

基本手当日額には、離職時の年齢区分ごとに上限額があります。ハローワークの案内では、令和8年8月1日現在の上限額は次のとおりです。

離職時の年齢基本手当日額の上限額
30歳未満7,450円
30歳以上45歳未満8,270円
45歳以上60歳未満9,110円
60歳以上65歳未満7,830円

また、厚生労働省の計算式では、賃金日額の下限は3,203円、それに対応する基本手当日額は2,562円とされています。上限額・下限額は、平均給与額の変動などにもとづいて毎年8月1日に見直されます。

ステップ3:所定給付日数を確認する

所定給付日数は、離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって決まります。ハローワークの案内をもとに整理すると、次のとおりです。

自己都合退職・定年退職などの場合

下の2つの区分(特定受給資格者など、就職困難者)に当てはまらない人は、年齢にかかわらず次の日数です。

被保険者であった期間所定給付日数
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

倒産・解雇など(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)の場合

離職時の年齢1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
30歳未満90日90日120日180日―
30歳以上35歳未満90日120日180日210日240日
35歳以上45歳未満90日150日180日240日270日
45歳以上60歳未満90日180日240日270日330日
60歳以上65歳未満90日150日180日210日240日

期間の定めのある労働契約が更新されなかったことなどによる一部の特定理由離職者は、離職日が2027年3月31日までの場合に限り、特定受給資格者と同じ日数になります。

障害者などの就職困難者の場合

離職時の年齢1年未満1年以上
45歳未満150日300日
45歳以上65歳未満150日360日

関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

失業保険の計算例

ここでは、35歳で、離職前6か月の賃金が毎月30万円、雇用保険の被保険者期間が8年の人を例に計算します。

計算の手順計算と結果
① 賃金日額30万円×6か月÷180=10,000円
② 基本手当日額0.8×10,000-0.3×{(10,000-5,480)÷(13,490-5,480)}×10,000≒6,307円(給付率は約63%)
③ 所定給付日数(自己都合退職の場合)被保険者期間10年未満のため90日
④ 受給額の目安(自己都合退職の場合)6,307円×90日=567,630円
⑤ 倒産・解雇などで離職した場合35歳以上45歳未満・5年以上10年未満のため180日6,307円×180日=1,135,260円

同じ賃金でも、離職理由によって所定給付日数が変わるため、受給額の目安に大きな差が出ることがわかります。なお、この計算例は目安です。実際の金額は、離職票の賃金記録などをもとにハローワークが決定します。

関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説

失業保険の金額や日数が変わる条件

離職時の年齢

年齢区分によって、基本手当日額の上限額と給付率の幅が変わります。特定受給資格者などの場合は、所定給付日数も年齢によって異なります。

離職理由

倒産・解雇などによる離職か、自己都合による離職かで、所定給付日数が変わります。離職理由はハローワークが受給資格を決定する際に判定するため、離職票の記載が実際の理由と異なる場合は、手続きの際に伝えましょう。

被保険者であった期間

雇用保険の被保険者であった期間が長いほど、所定給付日数は多くなります。前の会社を辞めた後、基本手当や再就職手当などを受給せず、1年以内に次の会社で雇用保険に加入した場合は、前の会社での期間も通算されます。

受給中のアルバイトや内職

ハローワークの案内では、受給中に1日の労働時間が4時間以上の仕事をした日は「就労」となり、その日の基本手当は支給されません。4時間未満の場合は「内職・手伝い」となり、収入額によって基本手当が減額されることがあります。また、週20時間以上の継続的な仕事に就いた場合は「就職」として扱われます。アルバイトなどをした日は、失業認定申告書で正確に申告しましょう。

受給期間を過ぎた場合

基本手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。手続きが遅れてこの期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。病気やけがなどで引き続き30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できます。

毎年8月1日の改定

基本手当日額の上限額・下限額や計算式の金額は、毎年8月1日に見直されます。計算するときは、最新の金額を確認しましょう。

注意:令和6年の雇用保険法改正により、令和10年10月1日から、雇用保険の加入条件が週10時間以上に広がるほか、賃金日額の下限額の見直しや、受給中の収入による減額の仕組みの廃止なども予定されています。

給付制限があると受け取り開始が遅くなる

正当な理由のない自己都合退職の場合は、7日間の待期の後に給付制限があり、その間は基本手当が支給されません。給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です(退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合などは3か月)。

給付制限は受け取り開始の時期に関わるもので、計算した所定給付日数そのものが減るわけではありません。ただし、受給期間の1年は離職日の翌日から進むため、手続きは早めに始めましょう。

関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

早く再就職した場合は再就職手当も確認する

基本手当の受給資格決定を受けた後、所定給付日数を一定以上残して安定した仕事に就いた場合は、再就職手当の対象になる可能性があります。

支給額は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら支給残日数の70%、3分の1以上なら60%を、基本手当日額に掛けた額です。再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限額があります。

関連記事:雇用保険とは?対象者・条件・手続き・注意点をわかりやすく解説

失業保険の計算に関するよくある質問

Q. 失業保険に税金はかかりますか?

A. 雇用保険の基本手当は、所得税などの課税対象になりません。受給中に確定申告をする場合も、基本手当は収入に含めずに計算します。

Q. パートやアルバイトでも計算方法は同じですか?

A. 同じです。雇用保険の被保険者として受給要件を満たしていれば、離職前の賃金から賃金日額を計算し、給付率を掛けて基本手当日額を求めます。

Q. ボーナスは計算に含まれますか?

A. 含まれません。賃金日額は、離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金をもとに計算するため、賞与は対象外です。

Q. 自分の正確な金額はどこで分かりますか?

A. ハローワークで受給資格の決定を受けた後に交付される雇用保険受給資格者証で確認できます。事前に目安を知りたい場合は、離職票の賃金欄をもとに、この記事の手順で計算してみてください。

まとめ|失業保険の計算は3つのステップで確認しよう

  • 失業保険の受給額の目安は「基本手当日額×所定給付日数」で考えます。
  • 賃金日額は、離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計÷180で計算します。
  • 基本手当日額は賃金日額の約50〜80%(60〜64歳は45〜80%)で、年齢区分ごとに上限額があります。
  • 所定給付日数は、年齢・被保険者期間・離職理由などによって90日〜360日の間で決まります。
  • 上限額などは毎年8月1日に見直されるため、最新の金額を確認しましょう。

まずは給与明細で離職前6か月の賃金を確認し、賃金日額を計算するところから始めてみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月2日。基本手当日額の上限額・下限額などは毎年8月1日に改定されます。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。