退職を考えたとき、「自分は給付を受け取れる条件を満たしているのか」が気になる方は多いのではないでしょうか。

雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)は、雇用保険に加入していた人が退職すれば必ず受け取れるものではなく、ハローワークが定める受給要件を満たす必要があります。この記事では、失業保険の条件を2つの受給要件に分けて整理し、対象者と、対象外になるケースを解説します。

この記事のポイント

  • 失業保険の主な条件は「失業の状態にあること」と「一定の被保険者期間があること」の2つです。
  • 被保険者期間は、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上必要です。倒産・解雇などの場合は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも条件を満たします。
  • 病気やけが、妊娠・出産・育児などですぐに働けない人は、その間は対象になりません。
  • 65歳以上で離職した人は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金の対象になります。
  • 条件を満たしているかの最終的な判断は、ハローワークが行います。

失業保険の条件は2つ

厚生労働省は、基本手当は退職すれば受けられるものではなく、一定の受給要件を満たした場合にのみ受給できると案内しています。ハローワークの案内をもとに整理すると、主な受給要件は次の2つです。

受給要件内容
① 失業の状態にあることハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思と、いつでも就職できる能力があるのに、職業に就くことができない状態であること
② 被保険者期間があること原則として、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること

どちらか一方だけでは受け取れません。2つの要件をどちらも満たしていることが必要です。

ポイント:雇用保険に加入していたことと、失業保険の受給要件を満たすことは別の話です。加入期間だけでなく、退職後の状態も条件に含まれます。

関連記事:雇用保険加入条件|週20時間・雇用見込みなど加入要件と手続きを解説

条件1:「失業の状態」にあること

ここでいう「失業」は、単に仕事をしていない状態のことではありません。ハローワークの案内では、次のすべてに当てはまる状態とされています。

  1. ハローワークに来所し、求職の申込みをしていること
  2. 就職しようとする積極的な意思があること
  3. いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
  4. 本人やハローワークが努力しても、職業に就くことができないこと

つまり、「働きたい気持ちがあり、すぐに働ける状態で、実際に仕事を探しているのに、まだ仕事が見つかっていない」ことが条件です。

条件2:雇用保険の被保険者期間

被保険者期間とは、雇用保険に加入していた期間のうち、受給要件の判断に使う期間のことです。必要な期間は、離職理由によって次のように変わります。

離職理由必要な被保険者期間
自己都合退職・定年退職など離職日以前2年間に通算12か月以上
倒産・解雇など(特定受給資格者)離職日以前1年間に通算6か月以上でも可
正当な理由のある自己都合退職や、労働契約が更新されなかった場合など(特定理由離職者)離職日以前1年間に通算6か月以上でも可

被保険者期間の数え方

被保険者期間は、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切り、その期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月を「1か月」として数えます。

そのため、雇用保険に加入していた月でも、勤務日数や時間が少ない月は1か月として数えられないことがあります。パートやアルバイトで勤務日数が月によって変わる人は、特に確認しておきましょう。

前の会社の期間も通算できる場合がある

前の会社を辞めた後、基本手当や再就職手当などを受給せず、1年以内に次の会社で雇用保険に加入した場合は、前の会社での被保険者期間も通算されます。転職して間もなく退職する場合でも、前職の期間を含めて条件を満たすことがあります。

失業保険の対象者

雇用保険の被保険者であった人は、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員などの雇用形態にかかわらず、受給要件を満たせば対象になります。

65歳以上の人は高年齢求職者給付金

65歳以上の高年齢被保険者であった人が離職した場合は、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」の対象になります。厚生労働省の案内では、主な内容は次のとおりです。

項目内容
受給要件失業の状態にあり、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あること
支給額被保険者であった期間が1年未満なら基本手当の30日分、1年以上なら50日分(一時金)
受給期限離職日の翌日から1年

失業保険の対象外になるケース

被保険者期間の条件を満たしていても、「失業の状態」に当たらない場合は、その間は基本手当を受け取れません。ハローワークや厚生労働省の案内をもとに、主なケースと、その場合に確認したいことを整理しました。

対象外になるケース確認したいこと
病気やけがのため、すぐには就職できない健康保険の傷病手当金と、基本手当の受給期間の延長
妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない基本手当の受給期間の延長
定年などで退職し、しばらく休養するつもり定年退職者の受給期間の延長(離職日の翌日から2か月以内に申請)
結婚などにより家事に専念し、すぐには就職できない就職できる状態になってから、受給期間内に手続きする
学業に専念する就職できる状態になってから、受給期間内に手続きする
会社などの役員に就任している役員としての就任状況をハローワークに申告する
自営業を始めた(開業準備を含む)事業を開始した場合の受給期間の特例(開始日などの翌日から2か月以内に申請)
被保険者期間が足りない前職の期間を通算できないか、離職理由の区分を確認する

すぐに働けない理由がある場合でも、受給期間の延長を申請しておけば、働ける状態になってから基本手当の手続きができることがあります。延長できる期間は、病気・育児などの場合で最大3年間です。

関連記事:失業保険の期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説

受給中も満たし続ける必要がある条件

失業保険は、最初に受給資格の決定を受けた後も、失業の状態が続いていることを確認しながら支給されます。

失業の認定と求職活動の実績

原則として4週間に1回、指定された認定日にハローワークで失業の認定を受けます。認定を受けるには、原則として前回の認定日から今回の認定日の前日までに2回以上の求職活動の実績が必要です。最初の認定日までは、待期満了後から1回以上が必要です(給付制限が3か月の人は、待期満了後から給付制限経過後の最初の認定日の前日までに3回以上)。

求人への応募やハローワークでの職業相談などが実績になり、職業紹介機関への登録や求人情報の閲覧だけでは実績に該当しません。

就労や収入の申告

受給中にアルバイトなどで働いた日は、失業認定申告書で正確に申告します。1日4時間以上働いた日は「就労」となり、その日の基本手当は支給されません。週20時間以上の継続的な仕事に就いた場合は「就職」として扱われます。

条件を満たしていても注意したいこと

自己都合退職は給付制限がある

正当な理由のない自己都合退職の場合は、条件を満たしていても、7日間の待期の後に原則1か月の給付制限があり、その間は支給されません(退職日が2025年4月1日以降の場合)。

関連記事:失業保険自己都合|失業保険の開始時期・給付期間・手続きを解説

受給期間を過ぎると受け取れない

基本手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。条件を満たしていても、手続きが遅れて受給期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。

条件に合わせて事実を変えない

離職理由や体調、就労状況は、事実のとおりに申告することが前提です。偽りその他不正の行為で基本手当を受けた場合は、以後受けられなくなり、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付も命じられます。

失業保険の条件に関するよくある質問

Q. 入社して1年未満で退職しても、失業保険の条件を満たせますか?

A. 自己都合退職の場合は、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。前の会社の期間を通算できる場合や、倒産・解雇などで離職した場合(離職日以前1年間に通算6か月以上で可)は、条件を満たすことがあります。

Q. パートやアルバイトでも条件は同じですか?

A. 同じです。雇用保険の被保険者であれば、雇用形態にかかわらず、2つの受給要件で判断されます。ただし、勤務日数や時間が少ない月は被保険者期間の1か月として数えられないことがあります。

Q. 退職後すぐに開業準備を始めたら、失業保険は受け取れますか?

A. 自営業を始めた人(開業準備を含む)は、失業の状態に当たらないため対象になりません。事業を開始した場合は、条件を満たせば受給期間の特例を申請できることがあります。

Q. 条件を満たしているかは事前に確認できますか?

A. 最終的な判断はハローワークが行います。退職前に、雇用保険被保険者証やマイナポータルで加入期間を確認し、離職理由や退職後の体調の見通しを整理しておくと、窓口での確認がスムーズです。

関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

まとめ|失業保険の条件は「状態」と「期間」の2つで確認しよう

  • 失業保険の主な条件は、失業の状態にあることと、一定の被保険者期間があることの2つです。
  • 被保険者期間は原則として離職日以前2年間に通算12か月以上で、倒産・解雇などの場合は1年間に通算6か月以上でも可です。
  • 被保険者期間は、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または時間数が80時間以上ある月を1か月と数えます。
  • 病気・育児・家事専念・学業専念・開業準備などで、すぐに働けない人は対象外です。
  • 65歳以上で離職した人は、高年齢求職者給付金の対象になります。

まずは雇用保険の加入期間と退職理由、退職後にすぐ働ける状態かどうかを整理して、2つの条件に当てはまるかを確認してみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月2日。制度の内容・条件・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。