以前に退職して給付を受けたことがある場合、「次に辞めたときも、また受け取れるのだろうか」と気になりますよね。
雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)は、何度でも受け取ることができますが、失業保険を一度もらうと、それまでの雇用保険の加入期間はリセットされ、次に受け取るには改めて加入期間を積み重ねる必要があります。この記事では、リセットの仕組みと、再び受け取るための条件、注意したい制限を解説します。
この記事のポイント
- 基本手当(再就職手当などを含む)を一度受け取ると、それより前の被保険者期間は次の受給の判定に使えなくなります。
- 次に受け取るには、前回の受給後に、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。
- 基本手当を受け取らずに1年以内に再就職した場合は、前の会社の期間も通算されます。
- 5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は、給付制限が3か月になります。
- 受給期間内に再就職して再び離職した場合は、前回の残りの日数を受け取れることがあります。
結論|失業保険を一度もらうと加入期間はリセットされる
厚生労働省のQ&Aでは、受給要件となる被保険者期間について、「過去に基本手当(再就職手当等を含む。)または特例一時金の支給を受けたことがある場合には、その支給を受けた後の被保険者であった期間のみが算定されることになります」と案内されています。
つまり、一度失業保険を受け取ると、それより前に雇用保険に加入していた期間は、次に失業保険を受け取るときの判定には使われません。これが、一般に「リセットされる」といわれる仕組みです。
ポイント:リセットされるのは「加入期間の数え方」です。失業保険を受け取れる回数に上限があるわけではなく、条件を満たせば再び受け取れます。
リセットされると何が変わる?
加入期間は、主に次の2つの場面で使われます。リセットされると、どちらも前回の受給後の期間で判断することになります。
| 場面 | リセット後の考え方 |
|---|---|
| 受給資格があるかどうか | 前回の受給後の被保険者期間で、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上あるかを判断する |
| 所定給付日数(受け取れる日数) | 被保険者であった期間が短くなるため、日数が少ない区分になりやすい |
たとえば、正当な理由のない自己都合退職の場合、所定給付日数は被保険者であった期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。長く勤めていた人でも、前回の受給後に勤めた期間が短ければ、90日の区分になります。
具体例
| ケース | 次の受給への影響 |
|---|---|
| 前回失業保険を受給 → 再就職して8か月で自己都合退職 | 前回の受給後の被保険者期間が12か月に満たないため、受給資格を満たさない |
| 前回失業保険を受給 → 再就職して3年勤務して自己都合退職 | 受給資格を満たす可能性がある。被保険者であった期間は3年として扱われ、所定給付日数は90日 |
| 前回は受給せず1か月後に再就職 → 2年勤務して自己都合退職(前職で15年勤務) | 前の会社の期間も通算され、被保険者であった期間が10年以上の区分になる可能性がある |
実際の判定は、離職票などをもとにハローワークが行います。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
リセットされないケース|前の会社の期間が通算される場合
厚生労働省のQ&Aでは、前の会社を退職してから、雇用保険(再就職手当等の就職促進給付を含む)を受給せず、1年以内に次の就職先に就職して雇用保険に加入した場合は、前の会社で加入していた期間も通算されると案内されています。
| 状況 | 前の会社の期間 |
|---|---|
| 失業保険を受給せず、1年以内に再就職して雇用保険に加入 | 通算される |
| 失業保険(再就職手当などを含む)を受給した | 通算されない(受給後の期間のみ) |
| 失業保険を受給しなかったが、再就職まで1年を超えて空いた | 通算されない |
転職先がすぐに決まり、失業保険を受け取らなかった場合は、加入期間を引き継げることになります。転職の際は、前の会社の被保険者番号を新しい会社に伝え、同じ番号で手続きしてもらいましょう。
なお、受給資格の決定を受けたものの、基本手当を受け取らずに再就職した場合などの扱いは、状況によって異なることがあります。個別にハローワークに確認しましょう。
一度もらった後に再び受給するための条件
再び失業保険を受け取るための条件は、初めて受け取るときと同じです。ただし、被保険者期間は前回の受給後の期間で数えます。
| 離職理由 | 必要な被保険者期間(前回の受給後の期間で判断) |
|---|---|
| 正当な理由のない自己都合退職・定年退職など | 離職日以前2年間に通算12か月以上 |
| 倒産・解雇など(特定受給資格者) | 離職日以前1年間に通算6か月以上 |
| 正当な理由のある自己都合退職、労働契約が更新されなかった場合など(特定理由離職者) | 離職日以前1年間に通算6か月以上 |
あわせて、働く意思と能力があり、求職活動をしているのに仕事に就けない「失業の状態」であることも必要です。被保険者期間は、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。
関連記事:失業保険の条件|対象者・受給要件・対象外になるケースをわかりやすく解説
一度もらった人が気をつけたい制限
自己都合退職を繰り返すと給付制限が3か月になる
正当な理由のない自己都合退職の給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です。ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合は、給付制限が3か月になります。
なお、2025年4月以降にリ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、給付制限が解除される仕組みもあります。
関連記事:失業保険自己都合|失業保険の開始時期・給付期間・手続きを解説
再就職手当は3年以内に再び受け取れない
再就職手当の支給要件には、就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないことが含まれています。3年以内に再就職手当を受けたことがある人は、早期に再就職しても再就職手当の対象になりません。
受給期間内に再就職し、再び離職した場合
失業保険を受け取っている途中で就職し、前回の受給期間内に再び離職した場合の扱いは、ハローワーク札幌の案内では次のとおりです。
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 再就職先で被保険者となり、離職して新たな受給資格を得た | 新たな受給資格で受給する(前の受給資格は消滅する) |
| 新たな受給資格を得られなかった | 前の受給資格の受給期間内、かつ支給残日数の範囲で基本手当を受けられる |
前の受給資格の残りを受け取る場合でも、待期や給付制限の期間が経過していないときは、経過するまで支給されません。また、再就職手当を受けた場合は、その手当に相当する日数分の基本手当を受けたものとして、残りの日数が計算されます。
手続きには、前の受給資格者証と離職票(または再離職証明書)が必要です。離職したら、すぐに求職の申込みをしましょう。
注意:前回の受給資格の残りを受け取れるのは、前回の受給期間(原則として前回の離職日の翌日から1年間)の範囲内に限られます。
関連記事:失業保険期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説
65歳以上の人の場合
65歳以上で離職した人は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金の対象になります。離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが条件で、被保険者であった期間が1年未満なら基本手当の30日分、1年以上なら50日分が一時金として支給されます。
失業保険を一度もらった人によくある質問
Q. 失業保険は一生のうちに何回までもらえますか?
A. 回数の上限はありません。離職するたびに、その時点で受給要件を満たしていれば受け取れます。ただし、被保険者期間は前回の受給後の期間で数えます。
Q. 前回の受給から何年たてば、また受け取れますか?
A. 年数ではなく、前回の受給後の被保険者期間で判断します。自己都合退職の場合は、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。
Q. 再就職手当をもらった場合もリセットされますか?
A. はい。厚生労働省のQ&Aでは、基本手当には再就職手当等を含むとされており、再就職手当を受けた場合も、その後の被保険者期間のみが算定されます。
Q. 長く勤めた会社を辞めてすぐ転職した場合、期間はどうなりますか?
A. 失業保険を受け取らずに1年以内に次の会社で雇用保険に加入した場合は、前の会社の期間も通算されます。
まとめ|失業保険は一度もらうと加入期間がリセットされる
- 失業保険(再就職手当などを含む)を一度受け取ると、それより前の被保険者期間は次の受給の判定に使われません。
- 再び受け取るには、前回の受給後に、原則として離職日以前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。
- 失業保険を受け取らずに1年以内に再就職した場合は、前の会社の期間も通算されます。
- 5年間に2回以上の自己都合退職では給付制限が3か月になり、再就職手当は3年以内に再び受け取れません。
- 受給期間内に再離職し、新たな受給資格がない場合は、前回の残りの日数を受け取れることがあります。
まずは前回いつ失業保険を受け取ったか、その後の勤務期間がどれくらいあるかを確認し、次の受給条件を満たしているか整理してみてください。
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参考文献
- 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワーク札幌「受給中に就職して受給期間内に再び離職したときは」
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
- 厚生労働省・ハローワーク リーフレット「再就職手当のご案内」(LL080801保02)
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・条件・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。