辞めた理由が「会社都合」か「自己都合」かで、その後に受け取れるお金にどれくらい差が出るのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)では、離職理由が3つの区分に分けられ、区分によって受け取り始める時期や日数が変わります。この記事では、退職が会社都合になる条件を区分ごとに比較し、受給額の差をシミュレーションで示したうえで、確認すべき書類を解説します。
この記事のポイント
- 失業保険の離職理由は、主に「特定受給資格者(会社都合)」「特定理由離職者」「一般の離職者(自己都合など)」の3つに分かれます。
- 会社都合になるのは、倒産・解雇・退職勧奨・長時間労働・賃金の未払いなど、ハローワークが定める範囲に当てはまる場合です。
- 同じ月給・年齢でも、会社都合と自己都合では所定給付日数が2倍以上違うことがあります。
- 会社都合は給付制限がないため、自己都合より受け取り始めが早くなります。
- 離職理由はハローワークが判定するため、離職票の記載内容と、経緯を示す書類の確認が欠かせません。
失業保険の離職理由は3つの区分
失業保険の手続きでは、離職理由によって次の3つの区分に分かれます。いわゆる「会社都合」は、このうちの特定受給資格者に当たります。
| 区分 | 主な離職理由 | 一般的な呼び方 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 倒産、事業所の廃止、解雇、退職勧奨、長時間労働、賃金の未払い・大幅な低下、ハラスメントなど | 会社都合 |
| 特定理由離職者 | 更新を希望したのに有期契約が更新されなかった場合や、体調不良・家族の介護など正当な理由のある自己都合退職 | やむを得ない理由による退職 |
| 一般の離職者 | 正当な理由のない自己都合退職、定年退職など | 自己都合など |
区分を判定するのはハローワークです。受給資格を決定する際に、本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで決まります。
ポイント:会社都合かどうかは、退職届の有無ではなく、離職に至った実際の理由で判断されます。
区分ごとの失業保険の扱いを比較
| 項目 | 特定受給資格者(会社都合) | 特定理由離職者 | 一般の離職者(正当な理由のない自己都合) |
|---|---|---|---|
| 必要な被保険者期間 | 1年間に通算6か月以上 | 1年間に通算6か月以上 | 2年間に通算12か月以上 |
| 給付制限 | なし | なし | 原則1か月(退職日が2025年4月1日以降) |
| 所定給付日数 | 90日〜330日 | 原則90日〜150日(雇止めの一部は会社都合と同じ) | 90日〜150日 |
| 国民健康保険料(税)の軽減 | 対象となる場合がある | 雇止めなどの場合は対象となる場合がある | 原則として対象外 |
期間の定めのある労働契約が更新されなかったことなどによる一部の特定理由離職者は、離職日が2027年3月31日までの場合に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同じになります。
会社都合になる条件
ハローワークの「特定受給資格者の範囲」では、会社都合に当たる離職を「倒産」等によるものと「解雇」等によるものに分けて示しています。主な内容を、退職のきっかけ別にまとめると次のとおりです。
| 退職のきっかけ | 会社都合に当たる主な例 |
|---|---|
| 会社の経営・事業所の事情 | 倒産、事業所の廃止、大量の離職、事業所の移転による通勤困難 |
| 会社からの働きかけ | 解雇(重大な理由による解雇を除く)、退職勧奨(恒常的な早期退職優遇制度への応募を除く) |
| 賃金 | 賃金の3分の1を超える額の不払い、賃金の85%未満への低下など |
| 労働時間・休業 | 離職直前6か月間の一定基準を超える時間外労働、会社の責任による3か月以上の休業 |
| 職場の環境 | 嫌がらせや著しい冷遇、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護に関する不利益な取扱い |
| 契約・労働条件 | 3年以上更新された有期契約の不更新、更新が明示されていた契約の不更新、明示された労働条件との著しい相違 |
| その他 | 職種転換などの際の配慮の欠如、事業所の業務の法令違反 |
それぞれに細かな判断基準があるため、当てはまりそうな場合はハローワークで確認しましょう。
関連記事:会社都合の退職|該当する条件・失業保険の扱い・確認すべき書類
シミュレーション|会社都合と自己都合でどれくらい違う?
離職前6か月の月給が毎月同じだった場合を例に、所定給付日数をすべて受け取ったときの目安を計算しました。基本手当日額は、厚生労働省の令和8年8月1日からの計算式をもとにしています。
例1:40歳・月給30万円・被保険者期間12年
| 項目 | 会社都合 | 正当な理由のない自己都合 |
|---|---|---|
| 基本手当日額 | 6,307円 | 6,307円 |
| 所定給付日数 | 240日 | 120日 |
| 受給額の目安 | 1,513,680円 | 756,840円 |
| 支給の対象になるまで | 待期7日間の後 | 待期7日間+給付制限1か月の後 |
例2:50歳・月給40万円・被保険者期間22年
| 項目 | 会社都合 | 正当な理由のない自己都合 |
|---|---|---|
| 基本手当日額 | 6,744円 | 6,744円 |
| 所定給付日数 | 330日 | 150日 |
| 受給額の目安 | 2,225,520円 | 1,011,600円 |
| 支給の対象になるまで | 待期7日間の後 | 待期7日間+給付制限1か月の後 |
1日あたりの金額は離職理由で変わりませんが、所定給付日数の差によって、受給額の目安に2倍以上の差が出ることがあります。実際の金額は、離職票の賃金記録などをもとにハローワークが決定します。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
退職時に会社から受け取る・請求できる書類
| 書類 | 受け取り方 | 会社都合の確認での役割 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票(-1、-2) | 退職後、一般的に会社を通じて交付 | 会社が記載した離職理由を確認する |
| 雇用保険被保険者証 | 会社が保管している場合は退職時に受け取る | 被保険者番号の確認に使う |
| 解雇理由証明書 | 解雇の理由について請求すると、会社はすぐに交付しなければならない | 解雇の理由を確認・証明する |
| 退職証明書 | 請求して交付を受ける | 退職の事由を確認する |
会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載し、離職理由などの記載内容も確認するよう案内されています。退職前に記載内容を見せてもらいましょう。
離職理由を確かめるチェックポイント
会社都合として扱われるべきだと考える場合は、次の点を確認しておきましょう。
| ✓ | チェックポイント | あわせて用意したいもの |
|---|---|---|
| □ | 離職票-2の離職理由が、実際の経緯と合っているか | 経緯を時系列でまとめたメモ |
| □ | 退職を勧められた事実を示すものがあるか | メール、書面、面談の日時の記録 |
| □ | 時間外労働の時間を確認できるか | タイムカード、勤怠記録 |
| □ | 賃金の未払いや低下を確認できるか | 給与明細、雇用契約書 |
| □ | 契約の更新回数や、更新の約束を確認できるか | 雇用契約書、労働条件通知書 |
| □ | 受給資格の決定後、受給資格者証の離職理由を確認したか | 雇用保険受給資格者証(または受給資格通知) |
離職票の離職理由が実際と違う場合は、受給手続きの際にハローワークの担当者に伝え、理由を証明する書類を提出します。
関連記事:雇用保険受給資格者証とは?もらえる時期・見方・必要な場面を解説
会社都合でも気をつけたいこと
受給期間内に受け取りきる
会社都合で所定給付日数が多い人は、受給期間(原則として離職日の翌日から1年。330日の人は1年と30日)のうちに受け取りきる必要があります。日数が多い分、手続きが遅れると影響が大きくなるため、離職票が届いたら早めにハローワークで手続きしましょう。
関連記事:失業保険期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説
事実にもとづいて主張する
離職理由は事実のとおりに申告することが前提です。偽りその他不正の行為で基本手当を受けた場合は、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付も命じられます。
働ける状態であることが前提
会社都合であっても、病気やけがですぐに働けない間は失業の状態に当たらず、基本手当は受け取れません。その場合は、健康保険の傷病手当金や、受給期間の延長を確認しましょう。
退職が会社都合かどうかに関するよくある質問
Q. 会社都合と自己都合で、1日あたりの金額は変わりますか?
A. 変わりません。基本手当日額は、離職前6か月の賃金と年齢をもとに計算されます。違いが出るのは、所定給付日数と給付制限の有無です。
Q. 会社都合の退職だと、すぐに失業保険を受け取れますか?
A. 受給資格の決定後、7日間の待期が終われば給付制限はありません。原則4週間に1回の認定日に失業の認定を受けると、通常5営業日程度で振り込まれます。
Q. 有期契約の満了で辞めた場合は会社都合ですか?
A. 更新により3年以上雇用されていた場合や、更新が明示されていた場合に更新されなかったときは、特定受給資格者の範囲に含まれます。それ以外で、更新を希望したのに更新されなかった場合は、特定理由離職者として扱われることがあります。
まとめ|退職が会社都合かどうかで受け取り方が大きく変わる
- 失業保険の離職理由は、特定受給資格者(会社都合)、特定理由離職者、一般の離職者の3つに分かれます。
- 会社都合は、倒産・解雇・退職勧奨・長時間労働・賃金の未払いなど、ハローワークが定める範囲に当てはまる場合です。
- 会社都合と自己都合では、所定給付日数の差によって受給額の目安が2倍以上違うことがあります。
- 会社都合は給付制限がなく、受け取り始めが早くなります。
- 離職票の離職理由を確認し、経緯を示す書類を準備しておきましょう。
まずは自分の退職のきっかけが会社都合の範囲に当てはまるかを確認し、離職票と手元の書類をチェックリストで点検してみてください。
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参考文献
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- 厚生労働省「基本手当日額の計算式及び金額(令和8年8月1日〜)」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
- 神奈川労働局(ハローワーク)「雇用保険受給者のみなさまへ」(R7.4)
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・判断基準・金額は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。