「退職届を出してしまったけれど、会社都合になるのだろうか」「会社都合だと、給付はいつから受け取れるのか」。退職の前後には、さまざまな疑問が出てきますよね。
会社都合での退職かどうかは、雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)を受け取り始める時期や日数に関わります。この記事では、よくある疑問を「該当する条件」「失業保険の扱い」「確認すべき書類」の3つのテーマに分けて、Q&A形式で解説します。
この記事のポイント
- 会社都合かどうかは、ハローワークが「特定受給資格者」に当たるかを、実際の離職理由をもとに判定します。
- 本人が退職届を出した場合でも、退職勧奨や長時間労働などが理由であれば、会社都合と判定される可能性があります。
- 会社都合と判定されると、給付制限がなく、所定給付日数は年齢と被保険者期間に応じて90日〜330日になります。
- 1日あたりの金額は、離職理由によって変わりません。
- 離職票の理由が実際と違う場合は、ハローワークで伝え、経緯を示す書類を提出します。
会社都合での退職の基本
会社都合での退職とは、倒産や解雇など会社側の事情によって、再就職の準備をする余裕がないまま離職することをいいます。失業保険の手続きでは、こうした離職をした人を「特定受給資格者」と呼びます。
| 押さえておきたいこと | 内容 |
|---|---|
| 誰が判定するか | ハローワーク。本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認して決める |
| 何で判定するか | 退職届の有無ではなく、離職に至った実際の理由 |
| 判定されると何が変わるか | 給付制限がなくなり、必要な被保険者期間が短くなり、所定給付日数が多くなる場合がある |
Q&A|会社都合に該当する条件
Q. 自分で退職届を出したら、自己都合になってしまいますか?
A. 退職届を出したかどうかだけでは決まりません。ハローワークの「特定受給資格者の範囲」では、事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けたことによる離職が含まれています。会社に促されて退職届を出した場合は、経緯を記録しておきましょう。
Q. 会社の希望退職の募集に応じた場合は?
A. 退職の勧奨による離職として扱われる可能性があります。ただし、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して離職した場合は、これに当たらないとされています。
Q. 残業が多すぎて辞めた場合は?
A. 離職の直前6か月間のうちに、3か月連続で45時間、いずれか1か月で100時間、または連続した2か月以上の平均で80時間を超える時間外労働が行われたことによる離職は、特定受給資格者の範囲に含まれます。タイムカードなどの記録を保管しておきましょう。
Q. 給料が下がった、または支払われなかったので辞めた場合は?
A. 賃金が、それまでの賃金に比べて85%未満に低下したことによる離職や、賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことによる離職なども、一定の条件のもとで範囲に含まれます。給与明細などで確認できるようにしておきましょう。
Q. パワハラや嫌がらせが原因で辞めた場合は?
A. 上司や同僚からの故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせを受けたことによる離職や、セクシュアルハラスメントなどによる離職は、特定受給資格者の範囲に含まれています。やり取りや相談の記録を残しておくと、事情を説明しやすくなります。
Q. 契約社員で、契約が更新されずに辞めた場合は?
A. 契約の更新により3年以上雇用されていた場合や、契約を結ぶ際に更新されることが明示されていた場合に更新されなかったときは、特定受給資格者の範囲に含まれます。それ以外で、本人が更新を希望したのに更新されなかった場合は、特定理由離職者として扱われることがあります。
Q. 会社が引っ越して通えなくなった場合は?
A. 事業所の移転により通勤が困難になったための離職は、特定受給資格者の範囲に含まれます。
Q. 懲戒解雇された場合も会社都合ですか?
A. 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は、特定受給資格者には当たりません。この場合の給付制限は3か月です。
ポイント:どの項目にも細かな判断基準があります。迷う場合は、ハローワークで具体的な事情を伝えて確認しましょう。
関連記事:会社都合の退職|該当する条件・失業保険の扱い・確認すべき書類
Q&A|会社都合での退職と失業保険
Q. 自己都合退職と比べて、何が変わりますか?
| 項目 | 会社都合(特定受給資格者) | 正当な理由のない自己都合 |
|---|---|---|
| 給付制限 | なし | 原則1か月(退職日が2025年4月1日以降) |
| 必要な被保険者期間 | 離職日以前1年間に通算6か月以上 | 離職日以前2年間に通算12か月以上 |
| 所定給付日数 | 90日〜330日 | 90日〜150日 |
| 1日あたりの金額 | 変わらない | 変わらない |
Q. 何日分受け取れますか?
A. 会社都合での退職の場合、所定給付日数は離職時の年齢と被保険者期間によって次のように決まります。
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
Q. いつから受け取れますか?
A. 給付制限がないため、受給資格の決定を受けた日から7日間の待期が過ぎれば、支給の対象になります。その後、原則4週間に1回の認定日に失業の認定を受けると、認定された日数分が通常5営業日程度で振り込まれます。
Q. 入社して半年ほどで会社都合退職になりました。受け取れますか?
A. 会社都合の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば、被保険者期間の条件を満たします。被保険者期間は、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。あわせて、働ける状態で求職していることが必要です。
Q. 1日あたりの金額はいくらになりますか?
A. 離職前6か月の賃金をもとにした賃金日額に、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)の給付率を掛けて計算します。離職理由によって変わることはありません。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
Q. 国民健康保険料は安くなりますか?
A. 神奈川労働局(ハローワーク)の案内では、倒産や解雇、雇止めなどで離職し、雇用保険受給資格者証の離職理由のコードが11、12、21、22、31、32、23、33のいずれかであれば、国民健康保険料(税)の軽減を受けられるとされています。お住まいの市区町村への届け出が必要です。
Q&A|確認すべき書類
Q. 離職票の理由が「自己都合」になっていました。どうすればよいですか?
A. 受給手続きの際に、ハローワークの担当者に実際の経緯を伝え、理由を証明する書類を提出します。ハローワークは本人と事業主の双方の主張や証拠を確認して、離職理由を判定します。退職前であれば、会社がハローワークに提出する離職証明書の記載内容を確認し、違う点を会社に伝えておくこともできます。
Q. どのような書類が証拠になりますか?
| 離職の理由 | 書類の例 |
|---|---|
| 退職勧奨・解雇 | 退職を勧められたメールや書面、面談の記録、解雇予告通知、解雇理由証明書 |
| 長時間労働 | タイムカード、勤怠システムの記録 |
| 賃金の未払い・低下 | 給与明細、雇用契約書、労働条件通知書 |
| ハラスメント | メッセージの記録、社内外の窓口への相談記録 |
| 契約の不更新 | 雇用契約書(更新回数や更新の約束が分かるもの) |
Q. 解雇理由証明書はもらえますか?
A. 厚生労働省の案内では、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合、会社はすぐに交付しなければならないとされています。また、解雇する場合は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。
Q. 会社都合と判定されたかは、どこで分かりますか?
A. 受給資格の決定後に交付される雇用保険受給資格者証(マイナンバーカードで手続きした場合は受給資格通知)の離職理由欄で確認できます。
関連記事:雇用保険受給資格者証とは?もらえる時期・見方・必要な場面を解説
Q. 離職票が届かない場合は?
A. 離職日の翌々日から10日を過ぎても届かない場合は、まず会社に確認します。会社が手続きをしない場合などは、身元確認書類と、退職したことが分かる書類を持って、住所を管轄するハローワークに相談しましょう。
関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説
会社都合での退職で気をつけたいこと
離職理由は事実のとおりに伝えることが前提です。偽りその他不正の行為で基本手当を受けた場合は、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付も命じられます。
また、所定給付日数が多い人ほど、受給期間(原則として離職日の翌日から1年。330日の人は1年と30日)のうちに受け取りきるために、早めの手続きが必要です。病気やけがですぐに働けない場合は、受給期間の延長や傷病手当金も確認しましょう。
まとめ|会社都合での退職は疑問を一つずつ確認しよう
- 会社都合かどうかは、ハローワークが実際の離職理由をもとに判定します。
- 退職届を出していても、退職勧奨・長時間労働・賃金の問題・ハラスメントなどが理由なら、会社都合となる可能性があります。
- 会社都合と判定されると、給付制限がなく、所定給付日数は90日〜330日になります。
- 1日あたりの金額は離職理由で変わりません。
- 離職票の理由が違う場合は、ハローワークで経緯を伝え、証拠となる書類を提出しましょう。
まずは自分の疑問に近いQ&Aを確認し、退職の経緯を示す書類が手元にそろっているかをチェックしてみてください。
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参考文献
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
- 神奈川労働局(ハローワーク)「雇用保険受給者のみなさまへ」(R7.4)
- 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・判断基準は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。