給与明細を見て、「雇用保険料って何に使われているの?」「自分はいくら払っていて、何がもらえるの?」と気になったことはありませんか。
結論からお伝えすると、雇用保険料は、雇用保険の被保険者が給与から負担している保険料です。保険料は事業主と労働者が分担し、2026年度の労働者負担は一般の事業で賃金の5/1,000です。納めた保険料は、退職後の雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)や、育児休業・教育訓練などの給付に使われます。この記事では、加入条件、保険料の計算方法、受け取れる給付をわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある人が原則として加入します。
- 雇用保険料は、賃金総額に保険料率を掛けて計算し、事業主と労働者で分担します。
- 2026年度(2026年4月〜)の労働者負担は、一般の事業で5/1,000、農林水産・清酒製造と建設の事業で6/1,000です。
- 保険料は、失業保険(基本手当)、再就職手当、教育訓練給付、育児休業給付などの財源になります。
- 退職時に給付を受けるには、雇用保険の被保険者期間などの条件を満たす必要があります。
雇用保険料とは?
雇用保険料とは、国が運営する雇用保険制度の保険料です。雇用保険は、労働者が失業したときや、育児・介護で休業したとき、スキルアップのために教育訓練を受けたときなどに給付を行い、生活と雇用の安定を支える制度です。
労働者を雇用する事業は、原則として雇用保険が強制的に適用されます。加入の条件を満たす人は、本人の意思にかかわらず被保険者となり、保険料を負担します。会社員の場合、保険料は毎月の給与や賞与から差し引かれる(天引きされる)のが一般的です。
雇用保険の加入条件
雇用保険に加入するのは、正社員だけではありません。パート・アルバイト・派遣など、雇用形態の名称にかかわらず、次の2つの条件を満たす人は原則として被保険者になります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 所定労働時間 | 1週間の所定労働時間が20時間以上であること |
| 雇用見込み | 同じ事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあること |
加入の対象外になる主なケース
- 1週間の所定労働時間が20時間未満の人
- 同じ事業主に継続して31日以上雇用される見込みがない人
- 昼間の学校に通う学生(夜間・通信・定時制の学生などは対象になる場合があります)
- 季節的に雇用される人のうち、一定の条件に当てはまる人
会社の役員や個人事業主は、労働者ではないため原則として対象外です。自分が加入しているかどうかは、給与明細に雇用保険料の控除があるか、会社に確認するとよいでしょう。
65歳以上の人や、複数の会社で働く人
65歳以上の人も、条件を満たせば「高年齢被保険者」として雇用保険に加入し、保険料を負担します。
また、複数の会社で働く65歳以上の人は、2つの事業所の労働時間を合計して週20時間以上(1つの事業所につき週5時間以上20時間未満)などの条件を満たす場合、本人がハローワークに申し出ることで被保険者になれる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」があります。
2028年10月からの変更:法改正により、2028年10月1日から加入条件の週所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に広がる予定です。短時間で働く人も、雇用保険の対象になる可能性があります。
雇用保険料の計算方法と保険料率
計算方法
雇用保険料は、次の式で計算します。
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率
ここでいう賃金には、基本給だけでなく、通勤手当や残業手当などの各種手当、賞与も含まれます。給与や賞与が支払われるたびに、その額に労働者負担分の保険料率を掛けた額が差し引かれます。
2026年度の雇用保険料率
雇用保険料率は事業の種類によって異なり、毎年度見直されます。2026年4月1日から2027年3月31日までの保険料率は次のとおりです。
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
| 建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 |
2026年度は、失業等給付・育児休業給付の保険料率が前年度より引き下げられ、一般の事業の労働者負担は5.5/1,000から5/1,000になりました。事業主だけが負担する雇用保険二事業の保険料率(一般の事業は3.5/1,000)は前年度から変わっていません。
計算例
一般の事業で働き、通勤手当を含む今月の給与(賃金総額)が30万円の場合、労働者が負担する雇用保険料は次のとおりです。
30万円 × 5/1,000 = 1,500円
賞与が支払われた月は、賞与の額にも同じ保険料率を掛けた額が差し引かれます。実際の控除額は、給与明細の「雇用保険料」の欄で確認できます。
雇用保険料を払うと受け取れる主な給付
雇用保険の給付は、失業したときだけのものではありません。主な給付は次のとおりです。いずれも、雇用保険の被保険者期間などの条件を満たしたうえで、ハローワークへの申請が必要です。
| 給付の種類 | 主な給付 | こんなときに確認 |
|---|---|---|
| 求職者給付 | 基本手当(失業保険) | 退職後、働ける状態で仕事を探すとき |
| 就職促進給付 | 再就職手当など | 基本手当の受給中に早く再就職したとき |
| 教育訓練給付 | 教育訓練給付金 | 厚生労働大臣が指定する講座を受講したとき |
| 雇用継続給付 | 高年齢雇用継続給付、介護休業給付 | 60歳以降に賃金が下がったとき、家族の介護で休業したとき |
| 育児休業等給付 | 育児休業給付金、出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金 | 育児休業を取得したとき、子の養育のために時短勤務をしたとき |
退職後に生活を支える給付:基本手当(失業保険)
雇用保険料を払っている人にとって、もっとも身近なのが基本手当です。退職後、働く意思と能力があり、仕事を探しているのに就職できない人が対象です。原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です(倒産・解雇などの場合は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも可)。
1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6か月の賃金をもとに、賃金日額のおよそ50〜80%(60歳以上65歳未満は45〜80%)で計算されます。受け取れる日数は、年齢や被保険者であった期間、離職理由によって90日から360日の間で決まります。
関連記事:失業保険もらいかた|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説
再就職したときの給付:再就職手当
基本手当の受給資格の決定を受けた後、早く再就職し、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あるなどの条件を満たすと、再就職手当の対象になる可能性があります。受給手続きの前に就職先が決まった場合は対象外です。
スキルアップのための給付:教育訓練給付
厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部が支給されます。一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)、専門実践教育訓練は50%(年間上限40万円)が基本で、資格取得などの条件を満たすと給付率が上がる場合があります。
育児・介護のための給付
育児休業を取得した場合は育児休業給付金などが、家族の介護のために休業した場合は介護休業給付金が支給される場合があります。2025年4月からは、両親がともに育児休業を取得した場合などに支給される出生後休業支援給付金と、2歳未満の子を養育するために時短勤務をした場合の育児時短就業給付金が加わりました。
関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説
雇用保険料について知っておきたい注意点
条件を満たすのに加入していない場合は会社に確認する
加入条件を満たしているのに給与から雇用保険料が引かれていない場合は、加入手続きが行われていない可能性があります。被保険者期間が足りないと、退職時に基本手当を受けられないこともあるため、まずは会社に確認しましょう。自分が加入しているかどうかは、ハローワークに照会することもできます。
退職時に受け取れるかは被保険者期間で決まる
雇用保険料を払っていれば、退職後に必ず給付を受けられるわけではありません。基本手当は、被保険者期間のほか、働ける状態で仕事を探していることが条件です。病気やけがですぐに働けない場合は、基本手当の受給期間の延長や、加入している健康保険の傷病手当金を確認しましょう。
関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説
雇用保険料は年末調整・確定申告で控除の対象になる
給与から差し引かれた雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料と同じく社会保険料控除の対象です。会社員の場合は、通常、年末調整で反映されます。
雇用保険料に関するよくある質問
Q. パートやアルバイトでも雇用保険料はかかりますか?
A. 雇用形態にかかわらず、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがあれば、原則として雇用保険に加入し、保険料を負担します。昼間の学校に通う学生は原則として対象外です。
Q. 雇用保険料は会社と自分でどのように分担していますか?
A. 2026年度の一般の事業では、合計13.5/1,000のうち、労働者が5/1,000、事業主が8.5/1,000を負担します。事業主の負担分には、事業主だけが負担する雇用保険二事業の保険料(3.5/1,000)が含まれています。
Q. 雇用保険料を払っていた期間はどこで確認できますか?
A. 雇用保険の加入記録(被保険者であった期間)は、ハローワークで照会できます。照会の方法や必要書類は、住所を管轄するハローワークで確認してください。直近の加入状況は、給与明細の雇用保険料の欄でも確認できます。
Q. 退職すると雇用保険料はどうなりますか?
A. 退職すると被保険者の資格を失い、雇用保険料の負担もなくなります。退職後に基本手当などを受けるには、会社から届く離職票を持ってハローワークで手続きをします。次の会社で雇用保険に加入した場合、条件によっては前の会社の被保険者期間が通算されます。
まとめ|雇用保険料は退職後や育児・介護の給付につながる保険料
- 雇用保険料は、雇用保険の被保険者が負担する保険料で、事業主と労働者で分担します。
- 週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある人は、原則として加入します(2028年10月からは週10時間以上に拡大予定)。
- 2026年度の労働者負担は、一般の事業で賃金総額の5/1,000です。
- 保険料は、基本手当(失業保険)、再就職手当、教育訓練給付、育児休業等給付、介護休業給付などに使われます。
- 退職時に給付を受けるには、被保険者期間などの条件があるため、自分の加入状況を確認しておくと安心です。
まずは給与明細で雇用保険料が控除されているかを確認し、退職を考えている場合は、自分が対象になる給付を整理しておきましょう。
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参考文献
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和8年度の雇用保険料率について」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
- 厚生労働省「第4章 被保険者について」(雇用保険事務手続きの手引き)
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」
- 厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- 厚生労働省「教育訓練給付金」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
※確認日:2026年10月5日。制度の内容・保険料率・金額は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。