「契約更新を希望したのに雇止めになった」「体調や家庭の事情で、やむを得ず退職した」という場合、失業保険の扱いがどうなるのか気になりますよね。

結論からお伝えすると、こうした理由で離職した人は、雇用保険の「特定理由離職者」に当たる可能性があります。特定理由離職者と判定されると、雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)の給付制限がなく、必要な被保険者期間も短くなります。この記事では、特定理由離職者の該当条件、給付日数、ハローワークで確認される書類を解説します。

この記事のポイント

  • 特定理由離職者は、①期間の定めのある労働契約が更新されなかった人(雇止め)と、②正当な理由のある自己都合で離職した人の2つに分かれます。
  • 特定理由離職者は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格の対象になり、自己都合退職のような給付制限もありません。
  • 雇止めによる特定理由離職者は、離職日が2027年3月31日までなら、特定受給資格者と同じ所定給付日数になります(暫定措置)。
  • 正当な理由のある自己都合による特定理由離職者の所定給付日数は、一般の離職者と同じ90〜150日です。
  • 該当するかはハローワークが判定します。理由を確認できる書類を準備しておくと安心です。

特定理由離職者とは?

特定理由離職者とは、雇用保険の基本手当を受ける際の離職理由の区分の一つです。自分の意思で辞めた形であっても、本人にはどうにもできない事情があって離職した人を、通常の自己都合退職とは区別して扱います。

離職理由は、大きく次の3つに分けられます。どれに当たるかで、受給に必要な被保険者期間、給付制限の有無、所定給付日数が変わります。

区分主な例必要な被保険者期間給付制限所定給付日数
特定受給資格者倒産、解雇など離職日以前1年間に通算6か月以上なし90〜330日
特定理由離職者雇止め、正当な理由のある自己都合退職離職日以前1年間に通算6か月以上なし雇止めは90〜330日(暫定措置)、正当な理由のある自己都合は90〜150日
一般の離職者正当な理由のない自己都合退職など離職日以前2年間に通算12か月以上原則1か月(退職日が2025年4月1日以降)90〜150日

特定受給資格者は、倒産や解雇など、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職を余儀なくされた人です。特定理由離職者は、それとは別に、雇止めや正当な理由による離職を対象とした区分です。

特定理由離職者に該当する条件

ハローワークが示す特定理由離職者の範囲は、次の2つです。

1. 期間の定めのある労働契約が更新されなかった人(雇止め)

期間の定めのある労働契約の期間が満了し、契約が更新されなかったことにより離職した人です。ただし、本人が更新を希望したにもかかわらず、更新の合意が成立しなかった場合に限られます。

例えば、労働契約書に「契約の更新をする場合がある」と書かれているなど、更新について明示はあるものの、更新の確約まではない場合がこれに当たります。

契約書に更新の確約がある場合や、契約を繰り返し更新して3年以上働いていた場合などは、特定受給資格者に当たることもあります。どちらに当たるかは、ハローワークが契約内容などを確認して判断します。

2. 正当な理由のある自己都合により離職した人

自己都合で離職した場合でも、次のような正当な理由があるときは、特定理由離職者に当たります。

  • 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力・聴力・触覚の減退などにより離職した人
  • 妊娠、出産、育児などにより離職し、雇用保険の受給期間の延長措置を受けた人
  • 父母の死亡・疾病・負傷などで父母を扶養するために離職を余儀なくされた場合や、常に本人の看護が必要な親族の疾病・負傷などのために離職を余儀なくされた場合など、家庭の事情が急変したことにより離職した人
  • 配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難になったことにより離職した人
  • 次のような理由で、通勤が不可能または困難になったことにより離職した人
  • 企業整備による人員整理などで希望退職者の募集に応じて離職した人(特定受給資格者に当たる場合を除く)

通勤が不可能または困難になった理由としては、次のようなものが挙げられています。

  • 結婚に伴う住所の変更
  • 育児に伴う保育所などの利用、または親族などへの保育の依頼
  • 事業所の通勤困難な地への移転
  • 自分の意思に反して住所・居所の移転を余儀なくされたこと
  • 鉄道・バスなどの運輸機関の廃止や運行時間の変更など
  • 事業主の命令による転勤・出向に伴う別居の回避
  • 配偶者の事業主の命令による転勤・出向、または配偶者の再就職に伴う別居の回避

これらは、給付制限を行う場合の「正当な理由」と同じ基準で判断されます。病気やけがで離職した場合も、離職後に働ける状態になっていることが、基本手当を受けるための前提です。

関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

特定理由離職者の給付日数と受給のメリット

必要な被保険者期間が短い

一般の離職者は、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。特定理由離職者は、離職日以前1年間に通算6か月以上あれば受給資格の対象になります。

給付制限がない

正当な理由のない自己都合退職の場合は、7日間の待期の後に給付制限があります(退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月)。特定理由離職者には給付制限がないため、7日間の待期が終わった後の期間から支給の対象になります。

所定給付日数

特定理由離職者の所定給付日数は、離職理由によって扱いが異なります。

区分所定給付日数
雇止めによる特定理由離職者(離職日が2027年3月31日まで)暫定措置により、特定受給資格者と同じ日数(年齢・被保険者期間により90〜330日)
正当な理由のある自己都合による特定理由離職者一般の離職者と同じ日数(被保険者期間により90〜150日)

参考として、特定受給資格者と同じ日数となる場合の所定給付日数は次のとおりです。

離職時の年齢1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
30歳未満90日90日120日180日―
30歳以上35歳未満90日120日180日210日240日
35歳以上45歳未満90日150日180日240日270日
45歳以上60歳未満90日180日240日270日330日
60歳以上65歳未満90日150日180日210日240日

正当な理由のある自己都合による特定理由離職者と一般の離職者は、被保険者であった期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。

関連記事:失業手当の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説

国民健康保険料(税)の軽減の対象になる

特定受給資格者や特定理由離職者として基本手当を受ける人は、国民健康保険料(税)の軽減制度の対象になる場合があります。前年の給与所得を100分の30として保険料を計算する仕組みで、軽減を受けるには住んでいる市区町村への届け出が必要です。

特定理由離職者と判定されるための確認書類

特定理由離職者に当たるかどうかは、ハローワークが受給資格を決定する際に判定します。ハローワークは、本人の主張、証拠となる書類、事業主の主張などを確認したうえで離職理由を決定します。手続きの際は、離職理由を確認できる書類を持参しましょう。

離職理由確認書類の例
雇止め(契約期間の満了)労働契約書、雇い入れ通知書、契約更新に関する通知書など
体力の不足、疾病、負傷など医師の診断書など、離職の理由となった状態がわかる書類
妊娠・出産・育児受給期間の延長措置を受けたことがわかる書類など
家庭の事情の急変、親族の看護家族の状況や看護の必要性がわかる書類など
結婚・転居などによる通勤困難住民票、通勤経路の時刻表など
事業所の移転による通勤困難事業所の移転通知、通勤経路の時刻表など
配偶者の転勤などに伴う別居の回避配偶者の辞令の写しなど
希望退職の募集への応募希望退職の募集要項、本人が応募したことがわかる書類など

求められる書類は、個別の事情や管轄のハローワークによって異なります。手元にある書類を整理し、どの書類が必要か事前にハローワークに確認しておくと安心です。

退職前に確認しておきたいこと

  • 労働契約書や更新に関する通知書を保管しているか
  • 契約更新を希望したことを、会社に伝えた記録があるか
  • 会社が作成する離職証明書の離職理由が、実際の事情と合っているか
  • 体調が理由の場合、医療機関で診断書を出してもらえるか

会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が記載内容を確認することになっています。離職理由の記載に疑問があれば、記載前に会社に確認しましょう。

特定理由離職者に関する注意点

離職票の離職理由と判定が異なることがある

離職票に記載された離職理由は、会社の判断によるものです。最終的な判定はハローワークが行うため、離職票の記載どおりになるとは限りません。実際の事情と違うと感じる場合は、受給手続きの際にハローワークへ伝え、事情を説明できる書類を提出しましょう。

判定に不服があるときは審査請求ができる

ハローワークが決定した離職理由に不服がある場合は、決定を知った日の翌日から3か月以内に、都道府県労働局の雇用保険審査官に審査請求ができます。

すぐに働けない場合は受給期間の延長を検討する

病気やけが、妊娠・出産・育児などで、離職後すぐに働けない場合は、基本手当を受けられません。引き続き30日以上働けない場合は、ハローワークに申請すると、本来の受給期間1年に働けない日数を加えることができます(加えられる期間は最大3年間)。体調面に不安がある場合は、加入している健康保険の傷病手当金もあわせて確認しましょう。

関連記事:失業保険のもらい方|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

特定理由離職者に関するよくある質問

Q. 特定理由離職者かどうかは、誰が決めるのですか?

A. ハローワークが、本人の主張、証拠となる書類、事業主の主張などを確認したうえで、受給資格の決定の際に判定します。会社が離職票に記載した離職理由がそのまま採用されるとは限りません。

Q. 特定理由離職者と特定受給資格者は、何が違いますか?

A. 特定受給資格者は、倒産や解雇などで離職を余儀なくされた人です。特定理由離職者は、雇止めや、正当な理由のある自己都合で離職した人です。どちらも給付制限がなく、必要な被保険者期間は離職日以前1年間に通算6か月以上ですが、所定給付日数の扱いが異なる場合があります。

Q. 体調不良で退職した場合、すぐに失業保険を受け取れますか?

A. 体調不良による離職は特定理由離職者に当たる可能性がありますが、基本手当を受けるには、働ける状態で仕事を探していることが必要です。まだ働けない場合は、受給期間の延長を申請し、働ける状態になってから手続きしましょう。

Q. 妊娠・出産で退職した場合も特定理由離職者になりますか?

A. 妊娠、出産、育児などで離職し、受給期間の延長措置を受けた場合は、特定理由離職者に当たります。働ける状態になったら、ハローワークで手続きをしましょう。

まとめ|特定理由離職者に当たるかは書類をそろえて確認しよう

  • 特定理由離職者は、雇止めにより離職した人と、正当な理由のある自己都合で離職した人の2つに分かれます。
  • 離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格の対象になり、給付制限もありません。
  • 雇止めによる特定理由離職者は、離職日が2027年3月31日までなら特定受給資格者と同じ所定給付日数になります。
  • 正当な理由のある自己都合による特定理由離職者の所定給付日数は、一般の離職者と同じ90〜150日です。
  • 判定はハローワークが行うため、労働契約書や診断書など、離職理由を確認できる書類をそろえておきましょう。

まずは退職前に、離職理由を確認できる書類が手元にあるかをチェックするところから始めてみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月5日。制度の内容・金額・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。