「退職後の給付は、どんな人が受け取れるのだろう」と、退職前に条件を確かめておきたい方は多いですよね。
雇用保険の基本手当(一般に失業保険・失業手当と呼ばれる給付)を受け取るには、雇用保険に一定期間加入していたことと、退職後に働ける状態で仕事を探していることが必要です。この記事では、失業手当の条件をチェックリストで確認し、ケース別の判定例と、対象外になるケースを解説します。
この記事のポイント
- 失業手当と失業保険は、どちらも雇用保険の基本手当を指す呼び方です。
- 条件の柱は「雇用保険の被保険者期間」と「働ける状態で求職していること」の2つです。
- 自己都合退職は離職日以前2年間に通算12か月以上、倒産・解雇などは離職日以前1年間に通算6か月以上の被保険者期間で条件を満たします。
- すぐに働けない人、すでに仕事をしている人、就職するつもりがない人は対象外です。
- 対象外の期間があっても、受給期間の延長などで後から受け取れる場合があります。
失業手当とは?失業保険と同じ雇用保険の基本手当
失業手当と失業保険は、どちらも正式な制度名ではなく、雇用保険の「基本手当」を指す呼び方です。ハローワークでは、基本手当は、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、1日も早く再就職できるように支給されるものと説明されています。
この記事では、読みやすさのため「失業手当」という言葉を使いますが、内容は雇用保険の基本手当の条件です。
チェックリスト|失業手当の条件を満たしているか確認しよう
まずは次の5つの項目を確認してみてください。すべてに当てはまれば、失業手当の条件を満たしている可能性があります。
| No. | チェック項目 | 関係する条件 |
|---|---|---|
| 1 | 退職した会社で雇用保険に加入していた | 被保険者期間 |
| 2 | 離職日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上ある(倒産・解雇などの場合は離職日以前1年間に通算6か月以上) | 被保険者期間 |
| 3 | 病気やけが、育児などの事情がなく、すぐに働ける | 失業の状態 |
| 4 | 就職したいという意思があり、仕事を探している(探すつもりがある) | 失業の状態 |
| 5 | まだ次の仕事が決まっておらず、自営業や開業準備もしていない | 失業の状態 |
ポイント:チェックリストはあくまで目安です。条件を満たしているかどうかは、ハローワークが受給資格を決定する際に判断します。
受給要件1|雇用保険の被保険者期間
1つ目の条件は、退職前に雇用保険の被保険者期間が一定以上あることです。必要な期間は、離職理由によって異なります。
| 離職理由 | 必要な被保険者期間 |
|---|---|
| 正当な理由のない自己都合退職・定年退職など | 離職日以前2年間に通算12か月以上 |
| 倒産・解雇など(特定受給資格者) | 離職日以前1年間に通算6か月以上 |
| 正当な理由のある自己都合退職、労働契約が更新されなかった場合など(特定理由離職者) | 離職日以前1年間に通算6か月以上 |
1か月として数えられる月
被保険者期間は、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切り、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。
ケース別の判定例
次の例は、ほかの条件を満たしていると仮定した場合の目安です。
| ケース | 被保険者期間の条件 |
|---|---|
| 入社から10か月で自己都合退職(前職なし) | 満たさない(2年間に通算12か月以上が必要) |
| 入社から8か月で会社の倒産により離職 | 満たす(1年間に通算6か月以上でよい) |
| 前職を辞めて基本手当を受けずに3か月後に再就職し、新しい会社で10か月勤務して自己都合退職(前職で2年勤務) | 満たす可能性がある(前職の期間を通算できる) |
| 週2日・1日5時間のパートで、月の勤務日数が11日未満かつ時間数が80時間未満の月が多い | その月は1か月として数えられないため、満たさない可能性がある |
前の会社を辞めた後、基本手当や再就職手当などを受給せず、1年以内に次の会社で雇用保険に加入した場合は、前の会社での被保険者期間も通算されます。
受給要件2|働ける状態で仕事を探していること
2つ目の条件は、「失業の状態」にあることです。ハローワークの案内では、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態とされています。
具体的には、次の3つがそろっていることがポイントです。
| ポイント | 意味 |
|---|---|
| 就職する意思 | 働きたいという気持ちがあり、積極的に仕事を探していること |
| 就職できる能力 | 健康状態や家庭の事情などから、いつでも働き始められること |
| 仕事に就いていない | ハローワークに求職の申込みをし、努力しても仕事が見つかっていないこと |
受給が始まった後も、原則として4週間に1回の認定日に、前回の認定日から今回の認定日の前日までに2回以上の求職活動の実績が必要です。求人への応募やハローワークでの職業相談などが実績になり、求人情報の閲覧だけでは実績になりません。
離職理由で変わる条件と受け取り方
離職理由は、必要な被保険者期間だけでなく、受け取り開始の時期や日数にも関わります。
| 項目 | 正当な理由のない自己都合退職 | 特定理由離職者 | 特定受給資格者(倒産・解雇など) |
|---|---|---|---|
| 必要な被保険者期間 | 2年間に通算12か月以上 | 1年間に通算6か月以上 | 1年間に通算6か月以上 |
| 給付制限 | 原則1か月(退職日が2025年4月1日以降) | なし | なし |
| 所定給付日数 | 90日〜150日 | 原則90日〜150日(一部は特定受給資格者と同じ) | 90日〜330日 |
離職理由は、ハローワークが受給資格を決定する際に、本人の主張や証拠書類、事業主の主張などを確認して判定します。
関連記事:失業保険自己都合|失業保険の開始時期・給付期間・手続きを解説
失業手当の対象外になるケース
被保険者期間が足りていても、次のような場合は「失業の状態」に当たらず、その間は失業手当を受け取れません。
すぐに働けない事情がある
- 病気やけがのため、すぐには就職できない
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない
- 定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる
これらの場合は、ハローワークで受給期間の延長を申請しておくと、働ける状態になってから手続きができることがあります。病気やけがで働けない間は、健康保険の傷病手当金も確認しましょう。
関連記事:失業保険の期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説
すでに仕事をしている・始めている
- 次の就職先が決まっている
- 会社などの役員に就任している
- 自営業を始めた(開業準備を含む)
事業を開始した場合は、条件を満たせば受給期間の特例を申請できることがあります(開始日などの翌日から2か月以内)。
就職するつもりがない
- 結婚などにより家事に専念する
- 学業に専念する
- 当面は就職するつもりがない
この場合も、就職する意思と能力が生じた後、受給期間内であれば手続きできます。
年齢による違い
60歳以上65歳未満の人
受給要件は64歳以下の人と同じですが、1日あたりの金額を計算する際の給付率の幅が45〜80%になります。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
65歳以上の人
65歳以上の高年齢被保険者であった人は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金の対象になります。離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが条件で、被保険者であった期間が1年未満なら基本手当の30日分、1年以上なら50日分が一時金として支給されます。
条件を満たしていたら|手続きの最初の一歩
条件を満たしていそうな場合は、退職後に会社から届く離職票を持って、住所を管轄するハローワークで求職の申込みをします。受給資格の決定を受けた後、7日間の待期、雇用保険受給者初回説明会、失業の認定を経て支給が始まります。
注意:失業手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から1年間です。条件を満たしていても、手続きが遅れると受け取れる日数が減ることがあります。
関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説
失業手当の条件に関するよくある質問
Q. 失業手当と失業保険は違うものですか?
A. 同じものです。どちらも、雇用保険の基本手当を指す一般的な呼び方です。
Q. 懲戒解雇された場合でも失業手当の条件を満たせますか?
A. 受給要件を満たしていれば受け取れる可能性があります。ただし、自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合は、3か月の給付制限があります。
Q. 退職後しばらく休んでから仕事を探したい場合はどうなりますか?
A. 休養している間は「失業の状態」に当たらないため受け取れません。受給期間は離職日の翌日から進むため、休んでいる間に期限が近づく点に注意が必要です。60歳以上の定年退職などで休養する場合は、離職日の翌日から2か月以内に申請すれば、受給期間を最大1年延長できます。
Q. アルバイトをしながら失業手当を受け取れますか?
A. 働いた日を失業認定申告書で正確に申告することが前提です。1日4時間以上働いた日はその日の支給がなく、週20時間以上の継続的な仕事に就いた場合は「就職」として扱われます。
まとめ|失業手当の条件は「期間」と「状態」をチェックしよう
- 失業手当(失業保険)は、雇用保険の基本手当を指す呼び方です。
- 条件の柱は、被保険者期間と、働ける状態で求職していることの2つです。
- 被保険者期間は、自己都合退職なら2年間に通算12か月以上、倒産・解雇などなら1年間に通算6か月以上が目安です。
- すぐに働けない人、仕事を始めている人、就職するつもりがない人は対象外です。
- 対象外の期間がある場合は、受給期間の延長などで後から受け取れないか確認しましょう。
まずはこの記事のチェックリストで自分の状況を確認し、迷う項目があれば、退職前に雇用保険の加入期間や離職理由を整理しておきましょう。
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参考文献
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
- 兵庫労働局「受給期間の延長手続き」
- ハローワーク渋谷「雇用保険求職者給付(失業保険)についてお問合せが多い項目(Q&A)」
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・条件・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。