退職を決めたものの、「退職後にどんな給付制度があるの?」「何から手続きすればいいの?」と迷っていませんか。

結論からお伝えすると、「退職給付金制度」という一つの公的制度があるわけではありません。雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)、再就職手当、健康保険の傷病手当金など、複数の制度をまとめた呼び方です。この記事では、退職前に確認したい給付制度の一覧と、必要書類、退職前から受給までの手続きの順番を解説します。

この記事のポイント

  • 退職給付金制度は、基本手当・再就職手当・就業促進定着手当・傷病手当金などをまとめた呼び方で、制度ごとに窓口が異なります。
  • 働ける状態なら雇用保険の基本手当、病気やけがで働けないなら健康保険の傷病手当金が確認の出発点です。
  • 退職前には、離職理由の記載、雇用保険被保険者証の有無、傷病手当金の継続給付の条件などを確認しておきます。
  • 基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間、再就職手当の申請は就職した日の翌日から1か月以内など、制度ごとに期限があります。
  • 健康保険や年金の切替えなど、給付以外の手続きもあわせて進めましょう。

退職給付金制度とは|複数の公的制度の総称

退職給付金制度は、退職前後に受け取れる可能性がある公的な給付をまとめて指す言葉です。公的な一制度の名称ではないため、実際には制度ごとに対象者と申請先が分かれています。会社から支払われる退職金とも別の仕組みです。

退職給付金制度として扱われる主な制度は、次のとおりです。

制度名対象になる人申請先
雇用保険の基本手当(失業保険)退職後、働ける状態で仕事を探す人住所を管轄するハローワーク
再就職手当基本手当の受給資格決定後、早く安定した職業に就いた人ハローワーク
就業促進定着手当再就職手当を受け、再就職先で6か月以上働き、賃金が離職前より下がった人ハローワーク
傷病手当金(退職後の継続給付を含む)業務外の病気やけがで働けず、給与が十分に出ない人加入している健康保険
基本手当の受給期間の延長病気やけが、妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上働けない人ハローワーク
高年齢求職者給付金65歳以上で雇用保険の高年齢被保険者として働いていた人ハローワーク

関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説

自分の状況から確認する制度を選ぶ

どの制度を確認すればよいかは、退職後の状況によって変わります。まずは自分がどの状況に当てはまるかを確認しましょう。

退職後の状況最初に確認する制度あわせて確認したいこと
働ける状態で仕事を探す雇用保険の基本手当離職理由と給付制限、所定給付日数
基本手当の手続き後、早く就職が決まった再就職手当8つの支給要件、申請期限
病気やけがで働けない傷病手当金(退職後の継続給付)退職日に出勤しないこと、受給期間の延長
妊娠・出産・育児などですぐに働けない基本手当の受給期間の延長働ける状態になってからの受給手続き
65歳以上で退職する高年齢求職者給付金被保険者期間(1年以上で50日分、1年未満で30日分)

なお、基本手当は「いつでも就職できる能力」がある失業の状態が前提で、傷病手当金は「仕事に就くことができない」状態が前提です。前提が反対のため、同じ期間に両方を受け取ることはできません。

退職給付金制度として扱われる主な給付の概要

雇用保険の基本手当(失業保険)

基本手当は、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、早く再就職できるように支給される給付です。原則として、離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。倒産・解雇などによる特定受給資格者や特定理由離職者は、離職の日以前1年間に通算6か月以上でも対象になります。

1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金(賞与を除く)の合計を180で割った賃金日額の、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)です。2026年8月1日からの上限額は年齢により7,450円〜9,110円、下限額は2,562円です。受け取れる日数(所定給付日数)は、年齢・被保険者期間・離職理由によって90日〜360日の間で決まります。

正当な理由のない自己都合退職の場合は、7日間の待期の後に給付制限があります(退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月)。2025年4月以降にリ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、所定の申出により給付制限が解除される仕組みもあります。

関連記事:失業手当計算シミュレーション|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説

再就職手当

基本手当の受給資格決定後に早く安定した職業に就き、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あるなどの要件をすべて満たすと支給されます。支給額は、基本手当日額×支給残日数×60%(3分の2以上残っている場合は70%)です。受給資格決定(求職申込み)前から内定していた会社に就職した場合や、基本手当の受給手続き前に就職した場合は対象外です。

関連記事:再就職手当条件|対象者・受給要件・対象外になるケースをわかりやすく解説

就業促進定着手当

再就職手当を受けた人が、再就職先に被保険者として6か月以上続けて雇用され、その6か月間の賃金が離職前の賃金より低い場合に受けられる手当です。申請は、就職した日から6か月目に当たる日の翌日から2か月以内に行います。

傷病手当金(退職後の継続給付)

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがのために仕事を休み、給与が十分に受けられない場合に支給される給付です。協会けんぽの案内では、療養のための休業であること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間に給与の支払いがないことが条件です。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

退職後も続けて受け取るには、退職日までに健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者や国民健康保険などの期間を除く)が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることが必要です。

基本手当の受給期間の延長

基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。病気やけが、妊娠・出産・育児などの理由で引き続き30日以上働けない場合は、申請により、働けない日数を受給期間に加えることができます。加えられる期間は最大3年間です。傷病手当金を受けている間に、基本手当の受給期間が過ぎてしまうのを防ぐためにも確認しておきたい制度です。

高年齢求職者給付金

65歳以上の雇用保険の被保険者(高年齢被保険者)が失業した場合は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金が一時金で支給されます。被保険者であった期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分です。離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることなどが条件です。

関連記事:65歳以上の失業保険|年齢別の給付制度・受給条件・申請方法を解説

退職前に確認しておきたいこと

退職給付金制度の手続きの多くは退職後に行いますが、退職前に確認しておくと、退職後の手続きがスムーズになります。

離職理由の記載を確認する

会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載することになっており、その際に離職理由などの記載内容も確認するよう案内されています。離職理由は、給付制限の有無や所定給付日数に関わる重要な項目です。

雇用保険被保険者証の有無を確認する

ハローワークは、できれば在職中に雇用保険被保険者証の有無を確認するよう案内しています。手元にない場合は、会社に確認しておきましょう。

離職票の交付を会社に伝える

離職票は、会社が資格喪失の手続きを行った後、ハローワークが発行し、会社を経由して交付されます。基本手当の手続きに必要なため、離職票の交付を希望することを会社に伝えておきます。

体調に不安がある場合は退職日の働き方を確認する

協会けんぽは、退職日に出勤した場合、退職後も傷病手当金を受け取る「資格喪失後の継続給付」の条件を満たさず、退職日の翌日以降の傷病手当金は支払われないと案内しています。継続給付を検討している場合は、主治医や加入している健康保険に早めに相談しましょう。

退職後の健康保険を決めておく

退職後の健康保険は、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者などから選びます。協会けんぽの任意継続は、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることが条件で、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。加入できる期間は2年間で、保険料は原則として全額自己負担になります。

退職給付金制度の申請に必要な書類

制度ごとの主な必要書類は次のとおりです。必要な書類は状況や加入先によって追加されることがあるため、提出前に各窓口の案内を確認してください。

制度名主な必要書類
雇用保険の基本手当雇用保険被保険者離職票(-1、-2)、個人番号確認書類、身元確認書類、写真2枚(マイナンバーカードを毎回提示する場合は省略可)、本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
再就職手当再就職手当支給申請書、採用証明書、雇用保険受給資格者証、離職前事業主との関連についての証明書など
就業促進定着手当就業促進定着手当支給申請書、雇用保険受給資格者証、再就職後6か月間の賃金や出勤日数がわかる書類(給与明細や出勤簿の写しなど)
傷病手当金健康保険傷病手当金支給申請書(被保険者・事業主・主治医がそれぞれ記入)
受給期間の延長(受給手続き前)すべての離職票-2、受給期間延長申請書、延長の理由を証明する書類(医師の証明書など)

関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

退職前から受給までの手続きの順番

退職給付金制度の手続きを、時期ごとに整理すると次のとおりです。働ける状態で基本手当を受け取る場合を中心に、関係する手続きをまとめています。

時期主な手続き窓口
退職前離職理由の確認、雇用保険被保険者証の確認、離職票の交付の依頼、退職後の健康保険の検討勤務先
退職日の翌日から20日以内任意継続を選ぶ場合は加入の手続き加入していた健康保険
退職後すぐ国民健康保険・国民年金に切り替える場合は手続き(国民年金は失業による保険料の特例免除も検討)市区町村
離職票が届いたら求職の申込みと受給資格の決定、7日間の待期住所を管轄するハローワーク
受給資格決定後雇用保険受給者初回説明会への参加ハローワーク
原則4週間に1回失業の認定を受け、基本手当を受給ハローワーク
就職が決まったら就職の申告、再就職手当の支給申請(就職した日の翌日から1か月以内)ハローワーク
就職から6か月後就業促進定着手当の支給申請(6か月目に当たる日の翌日から2か月以内)ハローワーク

病気やけがで働けない場合は、傷病手当金を加入している健康保険に申請し、あわせて基本手当の受給期間の延長をハローワークに申請します。働ける状態になったら、受給期間延長通知書などを持ってハローワークに来所し、基本手当の受給手続きを始めます。

注意:基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間です。手続きが遅れてこの期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。離職票が届いたら、早めにハローワークで手続きしましょう。

国民年金については、失業した人などを対象に、退職者の所得を0円とみなして保険料の免除を審査する特例があります。申請には、離職票や雇用保険受給資格者証のコピーなど、失業したことがわかる書類を添付します。手続きの詳細は、住んでいる市区町村で確認してください。

退職給付金制度を利用するときの注意点

申請期限と受給期間を過ぎない

基本手当の受給期間は離職日の翌日から原則1年、再就職手当の支給申請書の提出は就職した日の翌日から1か月以内です。傷病手当金を受ける権利は、労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効になります。制度ごとの期限を、退職前にスケジュールに書き出しておきましょう。

事実のとおりに申告する

ハローワークは、求職活動の実績がないのに申告することや、アルバイトなどの就労や収入を申告しないことを不正受給の例として挙げています。不正受給をすると、以後の基本手当等が受けられなくなり、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付を命じられます。

受給できるかは窓口の審査で決まる

受給資格や離職理由、支給額は、ハローワークや健康保険の審査で個別に決まります。インターネットの情報だけで判断せず、迷ったら窓口に確認するのが確実です。

退職給付金制度に関するよくある質問

Q. 退職給付金制度は誰でも使えますか?

A. いいえ。制度ごとに雇用保険や健康保険の加入期間、本人の状態などの条件があり、条件を満たした場合にのみ受け取れます。まずは自分がどの制度の条件に当てはまりそうかを確認しましょう。

Q. 退職金と退職給付金制度は同じものですか?

A. 別のものです。退職金は会社から支払われるお金で、退職給付金制度として扱われる雇用保険や健康保険の給付とは仕組みが異なります。退職金の有無や内容は、勤務先に確認してください。

Q. 退職前に申請できる制度はありますか?

A. 基本手当の手続きは、退職後に会社から届く離職票をハローワークに提出して始めます。在職中に休職して傷病手当金を受ける場合は、在職中から申請できます。退職前は、離職理由の確認や退職日の働き方など、申請の準備を進めておきましょう。

Q. 失業保険と傷病手当金はどちらを先に手続きすればいいですか?

A. 退職後すぐに働ける状態なら基本手当、病気やけがで働けない状態なら傷病手当金が先です。傷病手当金を受ける場合は、基本手当の受給期間の延長もあわせて申請し、働ける状態になってから基本手当の手続きをします。

まとめ|退職給付金制度は状況に合った制度から順番に確認しよう

  • 退職給付金制度は、基本手当・再就職手当・就業促進定着手当・傷病手当金などをまとめた呼び方で、公的な一制度の名前ではありません。
  • 働ける状態なら基本手当、働けない状態なら傷病手当金と受給期間の延長、早く就職したら再就職手当を確認します。
  • 退職前は、離職理由の記載、雇用保険被保険者証、離職票の交付、退職日の働き方、退職後の健康保険を確認しておきます。
  • 基本手当の受給期間は原則1年、再就職手当の申請は就職した日の翌日から1か月以内など、制度ごとの期限に注意しましょう。
  • 最終的な受給の可否や金額は、ハローワークや健康保険の審査で決まります。

まずは退職日と退職後の状況の見通しをもとに、どの制度を確認するかを決め、必要書類と手続きの順番を書き出してみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月20日。制度の内容・金額・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。