「自分は退職給付金の条件を満たしているのだろうか」と、退職前に不安になる方は少なくありません。

退職給付金は、雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)や傷病手当金などをまとめた呼び方で、受け取れる条件は制度ごとに異なります。この記事では、退職給付金にあたる主な制度の条件を整理し、あわせて必要書類と申請時期も解説します。自分に当てはまりそうな制度を確認する際の参考にしてください。

この記事のポイント

  • 退職給付金の条件は「どの制度か」によって異なります。
  • 失業保険は、雇用保険の被保険者期間と「働ける状態で仕事を探していること」が主な条件です。
  • 離職理由によって、必要な被保険者期間や給付制限の有無が変わります。
  • 傷病手当金を退職後も受け取るには、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることなどが条件です。
  • 制度ごとに申請先と期限があるため、条件とあわせて申請時期も確認しておきましょう。

退職給付金の条件は制度ごとに異なる

「退職給付金」は公的な一制度の名前ではありません。そのため、「退職給付金の条件」も一つに決まっているわけではなく、実際には次のように制度ごとに確認します。

制度名 主な条件(概要) 申請先
雇用保険の基本手当
(失業保険)
離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あり、働ける状態で求職活動をしている ハローワーク
再就職手当 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、1年を超えて働くことが確実な就職をした ハローワーク
傷病手当金 業務外の病気やけがの療養のために仕事に就くことができず、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けず、休業期間に給与の支払いがない 加入している健康保険
傷病手当金の
退職後の継続給付
退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態である 加入している健康保険

ここに挙げた条件は概要です。最終的に支給されるかどうかは、ハローワークや健康保険の審査によって個別に判断されます。

関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説

失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取れる条件

雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)の主な条件を、ハローワークと厚生労働省の案内をもとに見ていきます。

条件1:雇用保険の被保険者期間

離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要です。倒産や解雇などで離職した特定受給資格者や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由で離職した特定理由離職者は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも条件を満たします。被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。

雇用保険の一般被保険者になるのは、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合です。パートやアルバイトの方も、加入状況を勤務先に確認してみてください。

条件2:「失業の状態」にあること

ハローワークで求職の申込みをし、働く意思といつでも働ける能力があるのに、仕事に就けない状態であることが必要です。次のような場合は、この条件に当たらず、その間は基本手当を受け取れません。

  • 病気やけがのため、すぐには働けない
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには働けない
  • 定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐには働けない

すぐに働けない理由がある場合は、後述する受給期間の延長を検討できます。

条件3:求職活動の実績

受給手続き後は、原則として4週間に1回の失業認定日ごとに、前回の認定日から今回の認定日の前日までに原則2回以上の求職活動の実績が必要です。最初の認定日までは、待期満了後から1回以上が必要です(給付制限が3か月の人は、待期満了後から給付制限経過後の最初の認定日の前日までに3回以上)。求人への応募やハローワークでの職業相談などが実績になり、職業紹介機関への登録や求人情報の閲覧だけでは実績に該当しません。

離職理由によって変わる条件

失業保険では、離職理由によって必要な被保険者期間、給付制限の有無、所定給付日数が変わります。離職理由は、ハローワークが受給資格を決定する際に判定します。

区分 主な例 必要な被保険者期間 給付制限
特定受給資格者 倒産、解雇など 離職日以前1年間に通算6か月以上でも可 なし
特定理由離職者 期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合、その他やむを得ない理由による離職 離職日以前1年間に通算6か月以上でも可 なし
正当な理由のない自己都合退職 正当な理由のない自己都合による離職 離職日以前2年間に通算12か月以上 原則1か月(退職日が2025年4月1日以降)

正当な理由のない自己都合退職の給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月、2025年3月31日以前なら原則2か月です。ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合や、自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合は3か月です。また、2025年4月以降にリ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、所定の申出により給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになりました。対象となるかはハローワークに相談してください。

実際の退職理由と離職票の記載が異なる場合は、受給手続きの際にハローワークの担当者に伝えます。離職理由を証明する書類があれば持参しましょう。ハローワークは、本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで離職理由を決定します。

受給期間と受給期間の延長の条件

基本手当を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です(所定給付日数330日の人は1年と30日、360日の人は1年と60日)。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れなくなります。

病気、けが、妊娠、出産、育児などの理由で、引き続き30日以上働けない場合は、ハローワークに申請すると、働けなかった日数だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長3年間です。延長後の受給期間の最後の日まで申請はできますが、申請が遅いと所定給付日数の全てを受け取れない可能性があるため、早めに手続きしましょう。

再就職手当を受け取れる条件

基本手当の受給資格決定を受けた後に早く安定した職業に就いた場合、再就職手当の対象になる可能性があります。厚生労働省の案内では、次の要件をすべて満たすことが必要とされています。

  • 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
  • 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
  • 待期満了後の就職であること
  • 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間は、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であること
  • 離職前の事業主(資本・資金・人事・取引等の状況からみて密接な関係にある事業主を含む)に再び雇用されたものでないこと
  • 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
  • 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
  • 原則として、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること

支給額は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら支給残日数の70%、3分の1以上なら60%を、基本手当日額に掛けた額です。再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限額があり、毎年8月1日に改定されます。なお、基本手当の受給手続きをする前に再就職先が決まった場合は、再就職手当を受け取れません。

傷病手当金を受け取れる条件

業務外の病気やけがで働けない場合は、健康保険の傷病手当金が確認の対象になります。協会けんぽの案内では、次の4つをすべて満たすことが条件とされています。

  • 業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること(業務上・通勤災害によるものは労災保険の給付対象のため除く)
  • 仕事に就くことができないこと(療養担当者の意見などをもとに、仕事の内容も考慮して判断されます)
  • 連続する3日間(待期)を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと(給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます)

退職後も受け取るための条件

退職すると健康保険の被保険者資格を失いますが、次の2点を満たしている場合は、退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受け取れます。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険の期間は除く)
  • 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること

注意:退職日に出勤すると、継続給付の条件を満たさなくなり、退職日の翌日以降の傷病手当金は支給されません。また、いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても支給されません。

支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算して1年6か月です。また、継続給付を受けている人が老齢厚生年金などの老齢退職年金を受けるようになったときは傷病手当金が支給されず、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低い場合に差額が支給されます。

退職給付金の申請に必要な書類

条件を満たしていても、必要な書類がそろっていないと手続きが進みません。制度ごとの主な書類は次のとおりです。

制度名 主な必要書類
雇用保険の基本手当
(失業保険)
雇用保険被保険者離職票(-1、-2)、個人番号確認書類、身元確認書類、写真2枚(マイナンバーカード提示で省略可)、本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
再就職手当 就職の申告時に採用証明書(就職先に記入を依頼)、再就職手当の支給申請書(手続き方法は「受給資格者のしおり」で確認)
傷病手当金 健康保険傷病手当金支給申請書(被保険者・事業主・主治医がそれぞれ記入)。事業所の変更があった場合などは添付書類が必要
受給期間の延長
(受給手続き前の場合)
すべての離職票-2、受給期間延長申請書、延長の理由を証明する書類(医師の証明書など)

必要な書類は、状況や加入先によって追加されることがあります。提出前に、ハローワークや加入している健康保険の案内を確認してください。

退職給付金の申請時期と期限

退職給付金は、条件を満たしていても申請時期を逃すと受け取れなくなることがあります。制度ごとの申請時期の目安は次のとおりです。

制度名 申請時期・期限の目安
雇用保険の基本手当 離職票が届いた時点で就職(内定を含む)が決まっていなければ速やかに。受給期間は原則として離職日の翌日から1年間
再就職手当 支給申請書は就職した日の翌日から1か月以内に提出
傷病手当金 協会けんぽは1か月単位で給与の締切日ごとの申請を推奨。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年で時効
受給期間の延長 引き続き30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに(延長後の受給期間の最後の日までは申請可能)

退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

条件を満たしていても注意したいこと

失業保険と傷病手当金は同時に受け取れない

失業保険は「いつでも就職できる能力」がある失業の状態が前提で、傷病手当金は「仕事に就くことができない」状態が前提のため、同じ期間に両方の条件を満たすことはありません。退職後しばらく働けない場合は、受給期間の延長を申請しておくことで、働ける状態になってから基本手当の受給手続きができます。

条件に合わせて事実を変えない

離職理由や体調、就労状況は、事実のとおりに申告することが前提です。偽りその他不正の行為で基本手当等を受けた場合は、以後受けられなくなり、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付も命じられます。

退職給付金の条件に関するよくある質問

Q. 入社1年未満で退職しても失業保険の条件を満たせますか?

A. 原則として、離職日以前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。前の会社を辞めた後に基本手当や再就職手当などを受給せず、1年以内に次の会社で雇用保険に加入した場合は、前の会社での被保険者期間も通算されます。特定受給資格者や特定理由離職者に当たる場合は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも条件を満たします。

Q. 転職で健康保険が変わった場合、傷病手当金の「継続して1年以上」はどう数えますか?

A. 任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険の期間は含まれません。加入期間の数え方は個別の状況によるため、加入している健康保険に確認しましょう。

Q. 条件を満たしているか事前に分かりますか?

A. 最終的な判断はハローワークや健康保険が行います。退職前に加入期間や離職理由、体調の見通しを整理しておくと、窓口での確認がスムーズです。

まとめ|退職給付金の条件は制度別に確認しよう

  • 退職給付金の条件は、失業保険・再就職手当・傷病手当金など制度ごとに異なります。
  • 失業保険は、被保険者期間(原則として離職日以前2年間に通算12か月以上)と「失業の状態」であることが主な条件です。
  • 離職理由によって、必要な被保険者期間や給付制限(正当な理由のない自己都合退職は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月)が変わります。
  • 傷病手当金を退職後も受け取るには、被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に受給できる状態であることが必要です。
  • 必要書類と申請期限も、条件とあわせて確認しておきましょう。

まずは雇用保険・健康保険の加入期間と、退職理由、退職後の体調の見通しを書き出して、どの制度の条件に当てはまりそうかを確認してみてください。

退職前の給付制度の確認はRE:STARTの無料相談へ

加入期間や離職理由、体調の状況によって、確認すべき制度と条件は異なります。自分がどの制度の条件に当てはまりそうかを整理したい方は、RE:STARTの無料相談をご確認ください。

「退職前サポート RE:START」は、退職前給付金のサポートを行うサービスで、公式サイトではLINEでの無料相談・無料診断を案内し、退職前の相談を呼びかけています。なお、受給の可否や金額は、ハローワークや加入している健康保険の審査によって個別に決まります。

退職前サポート RE:START の無料相談・無料診断はこちら

参考文献

  • ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
  • ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
  • 厚生労働省「基本手当について」
  • 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
  • 厚生労働省・ハローワーク リーフレット「再就職手当のご案内」(LL080801保02)
  • 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
  • 協会けんぽ「傷病手当金」
  • 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問
  • 協会けんぽ「健康保険傷病手当金支給申請書」

※確認日:2026年9月15日。制度の内容・金額・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。