退職日が近づくと、「退職給付金はどうやってもらうの?」「何を持って、どこへ行けばいいの?」と手続きが気になりますよね。

結論からお伝えすると、退職給付金は一つの窓口でまとめて申請するものではありません。雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)はハローワーク、傷病手当金は加入している健康保険というように、制度ごとに窓口と書類が分かれています。この記事では、退職前の準備から受給開始までの流れを、制度別に順番に解説します。

この記事のポイント

  • 最初に「働ける状態か、働けない状態か」を確認し、申請する制度を決めます。
  • 失業保険は、離職票を受け取った後、住所を管轄するハローワークで求職の申込みをして手続きします。
  • 失業保険は、7日間の待期と原則4週間に1回の失業認定を経て振り込まれます。正当な理由のない自己都合退職は給付制限があります(退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月)。
  • 傷病手当金は、被保険者・事業主・主治医が記入した申請書を、加入している健康保険に提出します。
  • 申請には期限があるため、退職前から必要書類と順番を確認しておくと安心です。

ステップ0:退職給付金は「どの制度を申請するか」から決める

退職給付金は、失業保険(雇用保険の基本手当)、再就職手当、傷病手当金などをまとめた呼び方です。公的な一制度の名前ではないため、まずは自分が申請する制度を決めることから始めます。

今の状況 確認する制度 申請先
退職後、働ける状態で仕事を探す 雇用保険の基本手当(失業保険) 住所を管轄するハローワーク
基本手当の手続き後に早く就職が決まった 再就職手当 ハローワーク
病気やけがで働けない 傷病手当金(退職後の継続給付を含む) 加入している健康保険
病気やけがなどで、引き続き30日以上働けない 基本手当の受給期間の延長 ハローワーク

失業保険は「働ける状態」、傷病手当金は「働けない状態」が前提のため、同じ期間に両方を受け取ることはできません。体調面に不安がある場合は、どちらを先に手続きするか、主治医や窓口に相談しながら決めましょう。

関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説

退職前にやっておきたい準備

退職給付金の手続きの多くは退職後に行いますが、退職前に確認しておくと手続きがスムーズになることがあります。

雇用保険被保険者証の有無を確認する

ハローワークは、できれば在職中に雇用保険被保険者証の有無を確認するよう案内しています。

離職証明書の離職理由を確認する

会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載することになっています。その際、離職理由などの記載内容も確認するよう案内されています。離職理由は、給付制限の有無や所定給付日数に関わる項目です。

傷病手当金の継続給付の条件を確認する

協会けんぽは、退職日に出勤した場合、退職後も傷病手当金を受け取る「資格喪失後の継続給付」の条件を満たさず、退職日の翌日以降の傷病手当金は支払われないと案内しています。継続給付を検討している場合は、条件を加入先の健康保険で確認しておきましょう。

離職票の受け取り方を確認する

離職後、会社から雇用保険被保険者離職票(-1、-2)が届きます(受け取りに行く場合もあります)。会社は離職日の翌々日から10日以内に資格喪失の手続きを行い、ハローワークが発行した離職票が会社経由で交付される流れです。離職票の交付を希望することを会社に伝えておきましょう。

失業保険(基本手当)をもらう流れ

雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)は、ハローワークの案内に沿って、次の順番で手続きを進めます。

1. 離職票を受け取る

退職後、会社から雇用保険被保険者離職票(-1、-2)が届きます。離職日の翌々日から10日を過ぎても届かない場合は、まず会社に処理状況を確認します。会社が手続きをしない場合などは、住所を管轄するハローワークに相談できます。離職票が届いた時点で就職(内定を含む)が決まっていない場合は、速やかに手続きを始めましょう。

2. ハローワークで求職の申込みと受給資格の決定を受ける

住所を管轄するハローワークに行き、求職の申込みをしたうえで離職票を提出します。ハローワークが受給要件を満たしているかを確認し、受給資格を決定します。このとき離職理由も判定されます。

雇用保険の手続きは平日の8時30分から17時15分までで、求職の申込みにも時間がかかるため、16時前までに来所するよう案内されています。離職理由に納得できない場合も、この段階でハローワークに相談できます。

3. 7日間の待期期間を過ごす

受給資格の決定後、失業の状態にある7日間は「待期」と呼ばれ、基本手当は支給されません。退職理由にかかわらず、すべての人に適用されます。

4. 雇用保険受給者初回説明会に参加する

指定された日時に初回説明会があり、受給についての重要な説明を受けます。ここで雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取り、1回目の失業認定日が知らされます。

5. 4週間に1度、失業の認定を受ける

原則として4週間に1度、指定された日にハローワークで失業の認定を受けます。失業認定申告書に求職活動の状況などを記入し、雇用保険受給資格者証とともに提出します。

認定を受けるには、原則として前回の認定日から今回の認定日の前日までに2回以上の求職活動の実績が必要です。最初の認定日までは、待期満了後から1回以上が必要です(給付制限が3か月の人は、待期満了後から給付制限経過後の最初の認定日の前日までに3回以上)。求人への応募やハローワークでの職業相談などが実績になり、職業紹介機関への登録や求人情報の閲覧だけでは実績に該当しません。

6. 基本手当が振り込まれる

失業の認定を受けた日から、おおむね1週間ほどで指定した口座に基本手当が振り込まれます(ハローワークの案内では通常5営業日、休祝日や年末年始をはさむ場合は遅れることがあります)。その後は、所定給付日数を上限として「失業の認定」と「受給」を繰り返しながら仕事を探します。

ハローワークに持っていく書類

  • 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか)
  • 身元確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど。これらがない場合は、健康保険被保険者証や住民票記載事項証明書などのうち異なる2種類。コピー不可)
  • 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm。マイナンバーカードを毎回提示する場合は省略できます)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります)
  • 複数枚の離職票を持っている場合は、短期間のものも含めてすべて提出します

必要な書類は状況によって追加されることがあります。来所前に、管轄のハローワークの案内も確認しておくと安心です。

受給開始までの期間の目安

手続きから最初の振込までの期間は、退職理由によって変わります。

退職理由 待期 給付制限 支給の考え方
給付制限がない場合(倒産・解雇などによる離職など) 7日間 なし 手続き後、原則4週間に1回の失業認定日に認定を受けて支給されます
正当な理由のない自己都合退職(退職日が2025年4月1日以降) 7日間 原則1か月 給付制限期間が経過した後の認定日から支給となります
退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合、重責解雇の場合 7日間 3か月 給付制限期間が経過した後の認定日から支給となります

退職日が2025年3月31日以前の場合、給付制限は原則2か月です。また、2025年4月以降にリ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、所定の申出により給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになりました。実際の認定日は、ハローワークが指定します。

注意:基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。退職後は早めに手続きを始めましょう。

再就職手当をもらう流れ

基本手当の受給資格決定後(給付制限期間中を含む)に早く就職が決まった場合は、再就職手当の対象になる可能性があります。主な流れは次のとおりです。

  • 就職が決まったら、ハローワークに就職の申告をします。就職日が次回の認定日より前なら、原則として就職日の前日に来所します(給付制限期間中に採用される場合は前日でなくても構いません)。
  • 申告の際は、就職先に記入を依頼した採用証明書を持参します(後日の郵送等による提出も可能です)。再就職手当の対象になるには、就職日の前日までの失業の認定を受けておく必要があります。
  • 再就職手当の支給申請書を、就職した日の翌日から1か月以内に提出します。本人のほか、代理人や郵送での提出もできます。
  • ハローワークが申請書を受理して審査し、支給の可否を判断します。受理から支給までには一定の時間がかかります。

主な支給要件は、就職日の前日までの失業の認定を受けた後の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること、1年を超えて勤務することが確実であること、待期満了後の就職であることなどです。給付制限を受けた人は、待期満了後1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることも必要です(教育訓練等により給付制限が解除された場合も同様です)。なお、基本手当の受給手続きをする前に再就職先が決まった場合は、再就職手当を受け取れません。手続き方法は、ハローワークで配られる「受給資格者のしおり」で確認してください。

傷病手当金をもらう流れ(退職後も続けて受け取る場合)

業務外の病気やけがで働けない場合は、加入している健康保険に傷病手当金を申請します。協会けんぽに加入している場合の基本的な流れは次のとおりです。

1. 医療機関で受診し、働けない状態かを確認する

傷病手当金は、仕事に就くことができない状態であることが前提です。この状態かどうかは、療養担当者の意見などをもとに、仕事の内容も考慮して判断されます。

2. 退職後も受け取るための条件を確認する

退職後も続けて受け取るには、退職日までに健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険の期間を除く)が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることが必要です。協会けんぽでは、受けられる状態とは、業務外の病気やけがの療養のための休業であること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったことを満たしている状態と説明されています。

3. 申請書を作成して提出する

健康保険傷病手当金支給申請書は、被保険者・事業主・主治医がそれぞれの項目を記入し、必要書類を添えて提出します。協会けんぽでは電子申請が案内されており、紙の申請書は加入している支部へ郵送します。記入方法は協会けんぽの記入例で確認できます。健康保険組合に加入している場合は、組合の案内に従ってください。

協会けんぽは、給与の支払いの有無について事業主の証明が必要になるため、1か月単位で給与の締切日ごとに申請することを勧めています。退職後の期間を申請する場合の記入方法は、記入例や加入先の案内で確認しましょう。

4. 支給決定を待つ

協会けんぽでは、審査の結果支払いが可能であれば、受付日から10営業日以内に支払うとしています。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。なお、いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても、退職後の継続給付は受けられません。

体調が回復してから失業保険を受け取るには

退職後しばらく傷病手当金を受ける場合、その間に失業保険の受給期間(原則1年)が過ぎてしまうおそれがあります。そこで検討したいのが、ハローワークでの受給期間の延長です。

病気やけが、妊娠・出産・育児などの理由で引き続き30日以上働けない場合は、申請により、本来の受給期間1年に働けない日数を加えることができます。加えられる期間は最大3年間です。

申請は、引き続き30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに行うのが原則です。延長後の受給期間の最後の日まで申請はできますが、申請が遅いと所定給付日数の全てを受け取れない可能性があります。受給手続き前の人は、持っているすべての離職票-2、受給期間延長申請書、延長の理由を証明する書類(医師の証明書など)が必要で、郵送や代理人(委任状が必要)による申請もできます。働ける状態になったら、受給期間延長通知書や延長理由がなくなったことを確認できる書類などを持って、速やかにハローワークに来所します。

退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

手続きで気をつけたいこと

申請期限と受給期間を過ぎない

基本手当の受給期間は離職日の翌日から原則1年、再就職手当の支給申請書の提出は就職した日の翌日から1か月以内です。傷病手当金を受ける権利は、労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効になります。期限を過ぎると受け取れなくなる場合があるため、スケジュールを早めに立てておきましょう。

事実のとおりに申告する

ハローワークは、求職活動の実績がないのに申告することや、アルバイトなどの就労や収入を申告しないことを不正受給の例として挙げています。不正受給をすると、以後の基本手当等が受けられなくなり、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付を命じられます。給付制限期間中を含め、アルバイト・パートなどをした日は、収入の有無にかかわらず失業認定申告書で正確に申告してください。

個別の判断は窓口で確認する

受給資格や離職理由、支給額は、ハローワークや健康保険の審査で個別に決まります。インターネットの情報だけで判断せず、迷ったら窓口に確認するのが確実です。

退職給付金の手続きに関するよくある質問

Q. 離職票が届かない場合はどうすればいいですか?

A. 離職日の翌々日から10日を過ぎても届かない場合は、まず会社に処理状況を確認しましょう。会社が手続きをしない場合や督促しても届かない場合は、身元確認書類と、退職証明書など退職したことがわかる書類を持って、住所を管轄するハローワークに早めに相談してください。

Q. 失業保険の手続きは住所以外のハローワークでもできますか?

A. 原則は住所を管轄するハローワークです。住所を管轄するハローワーク以外での求職活動を希望する場合は、希望地を管轄するハローワークで手続きできる場合もあるため、詳しくは都道府県労働局やハローワークに確認してください。

Q. 退職給付金の申請をサポートしてもらえますか?

A. 手続きは原則として本人が行いますが、受給期間延長の申請や再就職手当の支給申請書のように、代理人や郵送で提出できる手続きもあります。手続きについての質問は、ハローワークや加入している健康保険の窓口で受け付けています。民間の相談サービスもありますが、受給の可否を決めるのはハローワークや健康保険です。

まとめ|退職給付金は制度ごとの手順で進めよう

  • 退職給付金は、失業保険・再就職手当・傷病手当金などの制度ごとに申請先と手順が異なります。
  • 失業保険は、離職票の受け取り、ハローワークでの求職申込み、待期、初回説明会、失業認定、振込の順に進みます。
  • 正当な理由のない自己都合退職は、待期の後に給付制限があります(退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月)。
  • 傷病手当金を退職後も受け取るには、被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に受給できる状態であることが条件です。退職日に出勤すると条件を満たしません。
  • 体調が回復するまでの間は、失業保険の受給期間の延長もあわせて検討しましょう。

まずは退職日と体調の見通しをもとに、どの制度から手続きするかを決め、必要書類をそろえるところから始めてみてください。

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参考文献

  • ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
  • ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
  • 厚生労働省「基本手当について」
  • 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
  • 厚生労働省・ハローワーク リーフレット「再就職手当のご案内」(LL080801保02)
  • 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
  • 協会けんぽ「傷病手当金」
  • 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問
  • 協会けんぽ「健康保険傷病手当金支給申請書」

※確認日:2026年9月15日。制度の内容・金額・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。