退職を考え始めると、収入が途切れる期間の生活費が気になりますよね。調べていくうちに「退職給付金」という言葉を見かけた方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、退職給付金とは特定の制度の名前ではなく、雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)や健康保険の傷病手当金など、退職前後に関わる公的な給付をまとめた呼び方です。この記事では、自分の状況からどの制度を確認すればよいかを順番に整理します。

この記事のポイント

  • 退職給付金は、複数の公的給付をまとめた呼び方で、制度ごとに条件と窓口が異なります。
  • 退職後に仕事を探す人は雇用保険の基本手当、病気やけがで働けない人は健康保険の傷病手当金が確認の出発点です。
  • 基本手当の窓口はハローワーク、傷病手当金の窓口は加入している健康保険です。
  • 基本手当と傷病手当金は、同じ期間に両方を受け取ることはできません。
  • どの制度も申請期限や受給期間があるため、退職前から準備しておくと安心です。

退職給付金とは?複数の公的給付をまとめた呼び方

退職給付金という言葉は、インターネット上などで「退職したときに受け取れるお金」を指す言葉として使われています。ただし、法律で定められた一つの制度の名前ではありません。

実際に受け取るお金は、雇用保険や健康保険といった公的な保険制度から、それぞれの条件にもとづいて支給されます。そのため、手続きも「退職給付金の申請」という形ではなく、制度ごとに別々に行います。

ポイント:退職給付金について調べるときは、「自分はどの制度の対象になりそうか」という視点で考えると整理しやすくなります。

状況別|確認したい制度の早見表

退職後の状況によって、確認すべき制度は変わります。まずは自分に近い状況を探してみてください。

退職後の状況確認したい制度窓口
働ける状態で、次の仕事を探す雇用保険の基本手当住所を管轄するハローワーク
基本手当の手続き後、早めに再就職が決まった再就職手当ハローワーク
再就職先の賃金が前職より下がった(再就職手当を受けた人)就業促進定着手当ハローワーク
業務外の病気やけがで働けない傷病手当金(退職後の継続給付)加入している健康保険
病気・けが・妊娠・出産・育児などで、引き続き30日以上働けない基本手当の受給期間の延長ハローワーク
65歳以上で退職し、仕事を探す高年齢求職者給付金ハローワーク

ここからは、主な制度について「誰が対象か」「いつまでに何をするか」を見ていきます。

雇用保険の基本手当(失業保険)

基本手当は、退職した人が安心して仕事を探し、早く再就職できるように支給される給付です。退職給付金という言葉で、もっとも多く想定されている制度といえます。

対象になる人

ハローワークの案内では、主に次の2点が受給の前提とされています。

  • 働く意思といつでも働ける能力があり、求職活動をしていても仕事が見つからない「失業の状態」にあること
  • 原則として、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること

倒産・解雇などで離職した人(特定受給資格者)や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由で離職した人(特定理由離職者)は、離職日以前1年間に通算6か月以上でも条件を満たします。

関連記事:雇用保険とは?対象者・条件・手続き・注意点をわかりやすく解説

受け取れる日数と金額の考え方

受け取れる日数(所定給付日数)は、離職時の年齢、被保険者であった期間、離職理由などによって90日〜360日の間で決まります。

1日あたりの金額(基本手当日額)は、原則として離職日直前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った「賃金日額」の、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)です。年齢区分ごとに上限額があり、毎年見直されるため、最新の金額はハローワークの案内で確認してください。

いつから受け取れるか

ハローワークで受給資格の決定を受けた後、7日間の待期があり、この間は支給されません。正当な理由のない自己都合退職の場合は、待期の後にさらに給付制限があります。給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です(退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合などは3か月)。

注意:基本手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れなくなります。

関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

再就職手当・就業促進定着手当

基本手当の受給資格決定を受けた後、早い段階で安定した仕事に就いた人は、再就職手当の対象になる可能性があります。

主な条件は、就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること、1年を超えて勤務することが確実であることなどです。支給額は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら支給残日数の70%、3分の1以上なら60%を、基本手当日額に掛けた額です。支給申請書は、就職した日の翌日から1か月以内に提出します。

再就職手当を受けた人が、再就職先に6か月以上雇用され、その6か月間の賃金が離職前の賃金より低い場合は、就業促進定着手当の対象になる可能性があります。

注意:基本手当の受給手続きをする前に再就職先が決まった場合は、再就職手当を受け取れません。

傷病手当金(退職後の継続給付)

業務外の病気やけがで働けない場合は、雇用保険ではなく、健康保険の傷病手当金が確認の対象になります。

協会けんぽの案内では、業務外の病気やけがの療養のための休業であること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間に給与の支払いがないことが条件とされています。1日あたりの金額は、原則として支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額÷30×3分の2で、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です。

退職後も受け取るための条件

退職すると健康保険の被保険者資格を失いますが、次の2点を満たしていれば、退職後も引き続き受け取れます。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険の期間を除く)が継続して1年以上あること
  • 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること

協会けんぽは、退職日に出勤した場合は継続給付の条件を満たさず、退職日の翌日以降の傷病手当金は支払われないと案内しています。

関連記事:傷病手当金|支給条件・金額・期間・申請方法をわかりやすく解説

退職給付金についてよくある誤解

誤解1:退職すれば誰でももらえる

厚生労働省は、基本手当は退職すれば受けられるものではなく、一定の受給要件を満たした場合にのみ受給できると案内しています。傷病手当金も同様に、条件を満たしているかどうかを健康保険が審査します。

誤解2:会社の退職金と同じもの

会社から支払われる退職金は、勤務先の制度にもとづくお金です。この記事で紹介している雇用保険や健康保険の給付とは別の仕組みで、退職金の有無や金額は勤務先に確認します。

誤解3:失業保険と傷病手当金は同時に受け取れる

基本手当は「いつでも就職できる能力がある」ことが前提で、傷病手当金は「仕事に就くことができない」ことが前提です。前提が反対のため、同じ期間に両方を受け取ることはできません。

退職後しばらく働けない場合は、ハローワークで基本手当の受給期間の延長を申請しておくと、働ける状態になってから基本手当の手続きができます。延長できる期間は最大3年間です。

誤解4:一つの窓口でまとめて申請できる

基本手当や再就職手当はハローワーク、傷病手当金は加入している健康保険と、制度ごとに窓口が分かれています。書類や期限もそれぞれ異なるため、自分に関係する制度ごとに準備しましょう。

関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

退職前に確認しておきたいこと

退職給付金にあたる制度の手続きは、多くが退職後に始まります。ただし、退職前に確認しておくとスムーズに進められることもあります。

確認すること理由
雇用保険被保険者証の有無ハローワークは、できれば在職中に被保険者証の有無を確認するよう案内している
離職証明書の離職理由離職理由は、給付制限の有無や所定給付日数に関わる
離職票の受け取り方基本手当の手続きには離職票が必要になる
退職日の勤務予定(傷病手当金を受ける場合)退職日に出勤すると、傷病手当金の継続給付の条件を満たさない
雇用保険・健康保険の加入期間基本手当や傷病手当金の継続給付の条件に関わる

関連記事:雇用保険被保険者証とは?使う場面・確認方法・再発行手続きを解説

退職給付金に関するよくある質問

Q. 退職給付金はいくらもらえますか?

A. 制度ごとに計算方法が異なり、一律の金額はありません。基本手当は離職前の賃金や年齢、傷病手当金は標準報酬月額などをもとに計算されます。正確な金額は、ハローワークや加入している健康保険の決定によります。

Q. 退職給付金の申請に期限はありますか?

A. 制度ごとにあります。たとえば、基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間、再就職手当の支給申請書は就職した日の翌日から1か月以内です。傷病手当金を受ける権利は、仕事に就けなかった日ごとにその翌日から2年で時効になります。

Q. 退職前でも準備できることはありますか?

A. あります。離職証明書の記載内容の確認や、雇用保険被保険者証の有無の確認、傷病手当金を受ける場合の退職日の過ごし方の確認などは、在職中のうちに済ませておくと安心です。

まとめ|退職給付金とは自分の状況に合う制度を確認すること

  • 退職給付金とは、雇用保険の基本手当や傷病手当金など、退職前後の公的給付をまとめた呼び方です。
  • 働ける状態で仕事を探すなら基本手当、病気やけがで働けないなら傷病手当金が確認の出発点です。
  • 早く再就職した場合は、再就職手当の対象になる可能性があります。
  • 基本手当と傷病手当金は同時に受け取れないため、受給期間の延長とあわせて順番を考えます。
  • 制度ごとに窓口・条件・期限が異なるため、退職前から準備しておきましょう。

まずは、退職後に「すぐ働ける状態か」「しばらく療養が必要か」を考え、早見表から自分に関係する制度を確認してみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月2日。制度の内容・金額・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。