自分から会社を辞める場合、「辞めた後に給付は受け取れるのか」「いつから受け取れるのか」が気になりますよね。

雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)は、自分の意思で退職した場合も、受給要件を満たせば受け取れます。ただし、会社都合の場合と比べて、受け取り開始が遅くなったり、給付日数が少なくなったりすることがあります。この記事では、失業保険を自己都合退職で受け取る場合の開始時期、給付期間、手続きの流れを解説します。

この記事のポイント

  • 自己都合退職でも、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あれば、失業保険の対象になります。
  • 正当な理由のない自己都合退職では、7日間の待期の後に原則1か月の給付制限があります(退職日が2025年4月1日以降の場合)。
  • 給付日数は被保険者期間に応じて90日・120日・150日で、年齢による違いはありません。
  • 体調不良や家族の介護など正当な理由がある場合や、教育訓練を受けた場合は、給付制限がかからないことがあります。
  • 受給期間は原則として離職日の翌日から1年間のため、退職後は早めに手続きを始めましょう。

自己都合退職でも失業保険は受け取れる

自分の意思で退職した場合でも、受給要件を満たしていれば失業保険を受け取れます。ハローワークの案内では、主に次の2つがそろっていることが前提とされています。

  • 働く意思と能力があり、求職活動をしているのに仕事に就けない「失業の状態」であること
  • 原則として、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること

自己都合退職と会社都合退職の主な違いは、次のとおりです。

項目正当な理由のない自己都合退職倒産・解雇など(特定受給資格者)
必要な被保険者期間離職日以前2年間に通算12か月以上離職日以前1年間に通算6か月以上でも可
待期7日間7日間
給付制限原則1か月(退職日が2025年4月1日以降)なし
所定給付日数90日〜150日90日〜330日

ポイント:自己都合退職だからといって失業保険を受け取れないわけではありません。違いが出るのは、主に受け取り開始の時期と給付日数です。

自己都合退職の失業保険はいつから?開始時期の目安

正当な理由のない自己都合退職の場合、ハローワークで受給資格の決定を受けた後、次の順番で支給が始まります。

期間内容
待期(7日間)受給資格の決定を受けた日から、失業の状態にある7日間。退職理由にかかわらず支給されない
給付制限(原則1か月)待期の後に続く期間。この間も基本手当は支給されない
給付制限後の認定日給付制限期間が経過した後の失業認定日に認定を受けると、支給の対象になる
振込失業の認定を受けた日から、通常5営業日程度で指定の口座に振り込まれる

つまり、手続きをしてから最初の振込までは、待期と給付制限だけでも1か月以上かかります。退職後の生活費は、この期間も含めて考えておくと安心です。

給付制限が3か月になるケース

次の場合は、給付制限が3か月になります。

  • 退職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合
  • 自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合

なお、退職日が2025年3月31日以前の場合、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は原則2か月でした。

給付制限中に気をつけたいこと

給付制限期間中も、求職活動を続ける必要があります。また、アルバイトなどで働いた日は、収入の有無にかかわらず失業認定申告書で正確に申告してください。週20時間以上の継続的な仕事に就いた場合は「就職」として扱われます。

関連記事:退職給付金はどうやってもらうの|申請手順・必要書類・受給開始までの流れを解説

自己都合でも給付制限がかからないケース

正当な理由がある自己都合退職(特定理由離職者)

自己都合退職でも、正当な理由があると認められた場合は「特定理由離職者」となり、給付制限はかかりません。また、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を得られます。ハローワークの案内では、主に次のような理由が挙げられています。

  • 体力の不足、心身の障害、病気、けがなどによる離職
  • 妊娠、出産、育児などによる離職で、受給期間の延長措置を受けた場合
  • 父母の死亡、病気、けがなどのため、扶養や看護が必要になったことによる離職
  • 配偶者や扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難になったことによる離職
  • 結婚に伴う住所の変更などにより、通勤が困難になったことによる離職

正当な理由に当たるかどうかは、ハローワークが離職理由を判定する際に、本人の主張や証拠書類、事業主の主張などを確認して判断します。医師の診断書など、理由を証明できる書類があれば持参しましょう。

会社側の事情で辞めた場合(特定受給資格者)

自分から退職を申し出た場合でも、その理由が会社側の事情によるものであれば、特定受給資格者として扱われる可能性があります。ハローワークの案内では、たとえば賃金の未払いや大幅な低下、離職直前6か月間のうちに3か月連続して45時間を超えるなどの時間外労働があったことによる離職などが挙げられています。特定受給資格者には給付制限がなく、所定給付日数も多くなります。

教育訓練を受けた場合

正当な理由のない自己都合退職でも、2025年4月以降にリ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、給付制限が解除され、基本手当を受給できます。離職期間中だけでなく、離職日前1年以内に教育訓練を受けた場合も対象です。

解除を受けるには、ハローワークへの申し出と、訓練実施施設による訓練開始日の証明書などが必要です。対象となる教育訓練については、ハローワークに確認しましょう。

自己都合退職の給付期間(所定給付日数)

正当な理由のない自己都合退職の場合、所定給付日数は年齢に関係なく、被保険者であった期間によって次のように決まります。

被保険者であった期間所定給付日数
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

たとえば、35歳で被保険者期間が8年の場合、自己都合退職なら90日ですが、倒産・解雇などによる離職(特定受給資格者)なら180日です。

受給期間は原則1年

所定給付日数とは別に、基本手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から1年間と決まっています。給付制限は所定給付日数そのものを減らすものではありませんが、手続きが遅れると、1年のうちに所定給付日数を受け取りきれないことがあります。

注意:病気やけが、妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上働けない場合は、ハローワークに申請すると、働けなかった日数分を受給期間に加えることができます(最大3年間)。

受け取れる金額の考え方

1日あたりの金額(基本手当日額)は、原則として離職前6か月の賃金をもとにした賃金日額の、およそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)です。計算方法は自己都合退職でも会社都合退職でも変わりません。

関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説

自己都合退職後の失業保険の手続きの流れ

  1. 退職後、会社から雇用保険被保険者離職票(-1、-2)を受け取ります。
  2. 住所を管轄するハローワークで求職の申込みをし、離職票を提出して受給資格の決定を受けます。このとき離職理由も判定されます。
  3. 7日間の待期を過ごし、雇用保険受給者初回説明会に参加します。
  4. 給付制限期間中も求職活動を続け、指定された認定日にハローワークで失業の認定を受けます。
  5. 給付制限期間が経過した後の認定日に認定を受けると、基本手当が振り込まれます。その後は原則4週間に1回の認定を繰り返します。

ハローワークに持っていくもの

  • 雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか)
  • 身元確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm。マイナンバーカードを毎回提示する場合は省略可)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

自己都合退職で気をつけたいこと

離職票の離職理由を確認する

会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載し、離職理由などの記載内容も確認するよう案内されています。実際の退職理由と離職票の記載が異なる場合は、受給手続きの際にハローワークに伝えましょう。

事実と異なる申告をしない

離職理由や就労の状況は、事実のとおりに申告することが前提です。偽りその他不正の行為で基本手当を受けた場合は、以後受けられなくなり、返還を命じられるほか、原則として不正に受けた額の2倍に相当する額以下の納付も命じられます。

体調が理由の場合は傷病手当金も確認する

病気やけがですぐに働けない状態の場合は、失業保険ではなく、健康保険の傷病手当金を確認することになります。失業保険と傷病手当金は、同じ期間に両方を受け取ることはできません。

関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説

失業保険と自己都合退職に関するよくある質問

Q. 自己都合か会社都合かは誰が決めますか?

A. ハローワークが受給資格を決定する際に、離職理由を判定します。本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで決定されます。

Q. 給付制限中にアルバイトをしてもよいですか?

A. ハローワークの案内に沿って、働いた日を失業認定申告書で正確に申告する必要があります。週20時間以上の継続的な仕事に就いた場合は「就職」として扱われるため、事前にハローワークに確認しておくと安心です。

Q. 給付制限中に再就職が決まった場合はどうなりますか?

A. 条件を満たせば、再就職手当の対象になる可能性があります。ただし、給付制限を受けた人は、待期満了後1か月間はハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。

Q. 退職前に失業保険の手続きはできますか?

A. 基本手当の手続きは、退職後に会社から届く離職票をハローワークに提出して始めます。退職前には、離職理由の記載内容の確認など、準備できることを進めておきましょう。

関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説

まとめ|自己都合退職の失業保険は開始時期を見込んで準備しよう

  • 自己都合退職でも、受給要件を満たせば失業保険を受け取れます。
  • 正当な理由のない自己都合退職は、7日間の待期の後に原則1か月の給付制限があります。
  • 給付日数は被保険者期間に応じて90日・120日・150日です。
  • 正当な理由がある場合や教育訓練を受けた場合は、給付制限がかからないことがあります。
  • 受給期間は原則1年のため、退職後は早めにハローワークで手続きを始めましょう。

まずは自分の被保険者期間と退職理由を確認し、受け取り開始までの期間を見込んで、退職後の生活費の計画を立ててみてください。

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参考文献

※確認日:2026年10月2日。制度の内容・期間・金額は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。