給与明細の「雇用保険料」の欄を見て、「この金額はどうやって決まっているのだろう」と思ったことはありませんか。
雇用保険料は、その月に支払われた給与の総額に、年度ごとに決められた保険料率を掛けて計算します。計算式自体はシンプルなので、仕組みを知っておけば自分で確認できます。この記事では、雇用保険の計算方法を、保険料率や負担割合、具体的な控除額の例とあわせて解説します。
この記事のポイント
- 労働者が負担する雇用保険料は「賃金総額(総支給額)×労働者負担の保険料率」で計算します。
- 令和8年度の一般の事業の保険料率は、労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000です。
- 通勤手当や残業手当、賞与も計算のもとになる賃金に含まれます。
- 月給30万円の人の場合、毎月の雇用保険料は1,500円です(一般の事業)。
- 給与から差し引く場合、1円未満の端数は50銭以下を切り捨て、50銭1厘以上を切り上げます。
雇用保険料の計算式
厚生労働省の資料では、雇用保険の被保険者が負担する雇用保険料は、被保険者の賃金総額(総支給額)に被保険者負担分の雇用保険料率を掛けて計算するとされています。
労働者が負担する雇用保険料=賃金総額(総支給額)×労働者負担の保険料率
ここでいう賃金総額は、手取り額ではなく、税金や社会保険料が差し引かれる前の総支給額です。健康保険や厚生年金の保険料が「標準報酬月額」という区分ごとの金額で計算されるのに対し、雇用保険料は、その月に実際に支払われた賃金をもとに毎月計算されます。
関連記事:雇用保険はどんな制度?加入条件・保険料・受け取れる給付を解説
令和8年度の雇用保険料率と負担割合
厚生労働省によると、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの雇用保険料率は次のとおりです。
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000(0.5%) | 8.5/1,000(0.85%) | 13.5/1,000(1.35%) |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000(0.6%) | 9.5/1,000(0.95%) | 15.5/1,000(1.55%) |
| 建設の事業 | 6/1,000(0.6%) | 10.5/1,000(1.05%) | 16.5/1,000(1.65%) |
令和7年度と比べると、労働者負担・事業主負担ともに0.5/1,000ずつ引き下げられました。
事業主の負担が多い理由
雇用保険料のうち、失業等給付と育児休業給付にあてる部分は、労働者と事業主が同じ率で負担します。これに加えて、事業主は「雇用保険二事業」にあてる保険料(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業は3.5/1,000、建設の事業は4.5/1,000)を負担します。
| 一般の事業の内訳 | 労働者 | 事業主 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 失業等給付・育児休業給付 | 5/1,000 | 5/1,000 | 10/1,000 |
| 雇用保険二事業 | ― | 3.5/1,000 | 3.5/1,000 |
| 合計 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 |
一般の事業の場合、雇用保険料全体のうち、労働者の負担は約37%、事業主の負担は約63%になります。
計算のもとになる「賃金」に含まれるもの・含まれないもの
雇用保険料の計算に使う賃金には、基本給だけでなく、さまざまな手当が含まれます。神奈川労働局の「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」をもとに、主なものを整理しました。
| 含まれるもの(主な例) | 含まれないもの(主な例) |
|---|---|
| 基本給 | 退職金(前払い退職金を除く) |
| 超過勤務手当・深夜手当・休日手当 | 結婚祝金・死亡弔慰金・災害見舞金 |
| 扶養手当・家族手当・住宅手当 | 出張旅費・宿泊費など実費弁償的なもの |
| 役職手当・管理職手当 | 解雇予告手当 |
| 通勤手当(定期券・回数券などを含む) | 休業補償費(業務災害・通勤災害) |
| 賞与 | 企業が負担する生命保険の掛金 |
| 休業手当(労働基準法第26条によるもの) | 制服 |
ポイント:通勤手当は、所得税では一定額まで非課税ですが、雇用保険料の計算では賃金に含まれます。給与明細で確認するときは注意しましょう。
雇用保険料の計算例
毎月の給与の場合
一般の事業で働く人の、ある月の総支給額が30万円(基本給・各種手当・通勤手当の合計)だった場合は、次のようになります。
30万円×5/1,000=1,500円
賞与の場合
賞与にも同じ保険料率がかかります。賞与の総支給額が60万円の場合は次のとおりです。
60万円×5/1,000=3,000円
1円未満の端数が出る場合
厚生労働省の資料では、給与から源泉控除する場合、被保険者負担分の1円未満の端数は、50銭以下なら切り捨て、50銭1厘以上なら切り上げるとされています(慣習的な取扱いなどの特約がある場合を除く)。
| 総支給額 | 計算と控除額 |
|---|---|
| 253,700円 | 253,700円×5/1,000=1,268.5円 → 50銭以下のため切り捨てて1,268円 |
| 253,900円 | 253,900円×5/1,000=1,269.5円 → 50銭以下のため切り捨てて1,269円 |
| 254,110円 | 254,110円×5/1,000=1,270.55円 → 50銭1厘以上のため切り上げて1,271円 |
なお、給与を現金で支払う際に被保険者が負担分を事業主に支払う場合は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げるとされています。
年間の目安
毎月の総支給額が30万円で、年2回、各60万円の賞与がある場合、1年間の雇用保険料(労働者負担)の目安は次のとおりです。
(30万円×12か月+60万円×2回)×5/1,000=24,000円
月給別|雇用保険料の控除額早見表
一般の事業で、令和8年度の保険料率(労働者負担5/1,000)を使った場合の、毎月の控除額の目安です。
| 月の総支給額 | 労働者負担(5/1,000) | 事業主負担(8.5/1,000) |
|---|---|---|
| 15万円 | 750円 | 1,275円 |
| 20万円 | 1,000円 | 1,700円 |
| 25万円 | 1,250円 | 2,125円 |
| 30万円 | 1,500円 | 2,550円 |
| 35万円 | 1,750円 | 2,975円 |
| 40万円 | 2,000円 | 3,400円 |
| 50万円 | 2,500円 | 4,250円 |
農林水産・清酒製造の事業や建設の事業で働く人は、労働者負担が6/1,000になるため、月給30万円なら1,800円です。
給与明細で確認したいポイント
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 総支給額×料率で合っているか | その月の総支給額に、勤務先の事業の種類に応じた労働者負担率を掛けて確認する |
| 通勤手当が含まれているか | 雇用保険料の計算では、通勤手当も賃金に含まれる |
| 年度の切り替わり | 保険料率は年度ごとに見直されることがあるため、4月以降の給与明細で率の変更を確認する |
| 雇用保険料が引かれていない | 加入条件(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)を満たしているのに引かれていない場合は、加入状況を会社に確認する |
雇用保険料が天引きされているのに、実際には加入手続きがされていなかったという場合もあります。厚生労働省によると、その場合は、給与明細などで天引きが確認できれば、2年を超えてさかのぼって加入できることがあります。給与明細は捨てずに保管しておきましょう。
関連記事:雇用保険加入条件|週20時間・雇用見込みなど加入要件と手続きを解説
雇用保険料と受け取れる給付の関係
雇用保険料は、退職したときに受け取る雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)や、育児休業給付などの財源になっています。ただし、受け取れる給付の額は、支払った保険料の額で決まるわけではありません。たとえば基本手当の1日あたりの金額は、離職前6か月の賃金をもとに計算されます。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
雇用保険料の計算に関するよくある質問
Q. パートやアルバイトも雇用保険料はかかりますか?
A. 雇用保険に加入していれば、雇用形態にかかわらず、その月の賃金総額に保険料率を掛けた雇用保険料がかかります。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、原則として加入します。
Q. 残業が多い月は雇用保険料も増えますか?
A. 増えます。超過勤務手当(残業代)も賃金に含まれるため、総支給額が増えた月は、雇用保険料もその分増えます。
Q. 雇用保険料は年末調整や確定申告で関係しますか?
A. 給与から差し引かれた雇用保険料は社会保険料として扱われ、所得から控除されます。源泉徴収票の社会保険料等の金額に含まれています。
Q. 会社の役員も雇用保険料を払いますか?
A. 会社の役員は原則として雇用保険に加入しないため、雇用保険料はかかりません。ただし、従業員としての身分もあり、労働者としての性格が強い場合は加入することがあります。
関連記事:雇用保険とは?対象者・条件・手続き・注意点をわかりやすく解説
まとめ|雇用保険料は総支給額×保険料率で計算できる
- 労働者が負担する雇用保険料は「賃金総額(総支給額)×労働者負担の保険料率」で計算します。
- 令和8年度の一般の事業の保険料率は、労働者5/1,000、事業主8.5/1,000です。
- 通勤手当や残業手当、賞与も計算のもとになる賃金に含まれます。
- 月給30万円なら、労働者負担は毎月1,500円が目安です(一般の事業)。
- 給与から差し引く場合の端数は、50銭以下切り捨て、50銭1厘以上切り上げです。
まずは手元の給与明細の総支給額に保険料率を掛けて、雇用保険料の欄の金額と合っているか確認してみてください。
退職前の給付制度の確認はRE:STARTの無料相談へ
雇用保険料を払ってきた期間や離職理由によって、退職後に受け取れる給付や手続きの順番は異なります。自分の場合に何をいつ準備すればよいかを整理したい方は、RE:STARTの無料相談をご確認ください。
「退職前サポート RE:START」は、退職前給付金のサポートを行うサービスで、公式サイトではLINEでの無料相談・無料診断を案内し、退職前の相談を呼びかけています。なお、受給の可否や金額は、ハローワークや加入している健康保険の審査によって個別に決まります。
▶ 退職前サポート RE:START の無料相談・無料診断はこちら
参考文献
- 厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
- 厚生労働省「雇用保険被保険者からの雇用保険料の控除方法」
- 神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」
- 厚生労働省「雇用保険制度 Q&A〜事業主の皆様へ」
- 厚生労働省「雇用保険料が天引きされていたのに雇用保険に『未加入』とされた方へ」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
※確認日:2026年10月2日。雇用保険料率は年度ごとに見直されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。