会社から退職を打診された、会社の業績悪化で辞めることになった。そんなとき、「自分は会社都合になるのか」は、退職後の生活に関わる大切なポイントです。
会社都合かどうかは、雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)の受け取り方に影響します。自分から退職届を出した場合でも、理由によっては会社都合として扱われることがあります。この記事では、会社都合退職に該当する条件、失業保険の扱い、退職前後に確認すべき書類を解説します。
この記事のポイント
- 失業保険の手続きでいう会社都合退職は、ハローワークが「特定受給資格者」と判定する離職のことです。
- 倒産や解雇のほか、退職勧奨、長時間労働、賃金の未払いや大幅な低下、ハラスメントなどによる離職も該当することがあります。
- 特定受給資格者は、給付制限がなく、被保険者期間は離職日以前1年間に通算6か月以上で受給資格を得られます。
- 所定給付日数は、年齢と被保険者期間に応じて90日〜330日と、自己都合退職より多くなる場合があります。
- 離職理由はハローワークが判定するため、離職票の記載内容と、理由を裏付ける書類を確認しておくことが大切です。
会社都合退職とは?失業保険では「特定受給資格者」
会社都合退職は一般的な呼び方で、法律で定められた言葉ではありません。失業保険の手続きでは、倒産や解雇などにより、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職を余儀なくされた人を「特定受給資格者」として扱います。いわゆる会社都合退職は、この特定受給資格者に当たる離職を指すことが一般的です。
特定受給資格者に当たるかどうかは、会社が決めるのではなく、ハローワークが受給資格を決定する際に判定します。本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで決定されます。
ポイント:退職届を自分で出したかどうかではなく、「なぜ離職したのか」という実際の理由で判定されます。
会社都合退職に該当する主なケース
ハローワークの「特定受給資格者の範囲」では、大きく「倒産」等による離職と「解雇」等による離職に分けて、該当する場合が示されています。主な内容を整理すると次のとおりです。
「倒産」等により離職した場合
| ケース | 主な内容 |
|---|---|
| 倒産 | 破産、民事再生、会社更生などの倒産手続の申立てや、手形取引の停止などに伴う離職 |
| 大量の離職 | 事業所で大量雇用変動の届出がされたことや、被保険者の3分の1を超える人が離職したことによる離職 |
| 事業所の廃止 | 事業所の廃止(事業活動が停止し、再開の見込みがない場合を含む)に伴う離職 |
| 事業所の移転 | 事業所の移転により、通勤が困難になったための離職 |
「解雇」等により離職した場合
| ケース | 主な内容 |
|---|---|
| 解雇 | 解雇による離職(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く) |
| 労働条件の相違 | 労働契約を結ぶ際に明示された労働条件が、事実と著しく違っていたことによる離職 |
| 賃金の未払い | 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことなどによる離職 |
| 賃金の低下 | 賃金が、それまでの賃金に比べて85%未満に低下したことなどによる離職 |
| 長時間労働 | 離職の直前6か月間のうちに、一定の基準(3か月連続で45時間、いずれか1か月で100時間、連続した2か月以上の平均で80時間)を超える時間外労働が行われたことによる離職 |
| 不利益な取扱い | 妊娠中・出産後の労働者や、子の養育・家族の介護を行う労働者に対する不利益な取扱いによる離職 |
| 配慮の欠如 | 職種転換などに際して、必要な配慮が行われなかったことによる離職 |
| 有期契約の不更新 | 更新により3年以上雇用されていた場合や、更新が明示されていた場合に、契約が更新されなかったことによる離職 |
| ハラスメント | 上司や同僚からの故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせ、セクシュアルハラスメントなどによる離職 |
| 退職勧奨 | 事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けたことによる離職 |
| 長期の休業 | 会社の責任による休業が引き続き3か月以上となったことによる離職 |
| 法令違反 | 事業所の業務が法令に違反したことによる離職 |
それぞれの項目には、細かな判断基準があります。自分のケースが当てはまるかどうかは、ハローワークで確認しましょう。
自分から辞めても会社都合になることがある
上の表のうち、退職勧奨、長時間労働、賃金の未払いや低下、ハラスメントなどは、本人が退職を申し出た形になっていても、特定受給資格者として扱われる可能性があります。会社から「自己都合で退職届を書いてほしい」と言われた場合も、実際の経緯を記録しておきましょう。
会社都合にならない主なケース
| ケース | 扱い |
|---|---|
| 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇 | 特定受給資格者には当たらず、給付制限は3か月 |
| 従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して離職 | 退職勧奨による離職には当たらない |
| 体調不良や家族の介護など、正当な理由のある自己都合退職 | 特定受給資格者ではなく「特定理由離職者」として扱われることがある(給付制限なし) |
| 更新を希望したのに有期契約が更新されなかった(3年未満・更新の明示なし) | 特定理由離職者として扱われることがある |
関連記事:失業保険自己都合|失業保険の開始時期・給付期間・手続きを解説
会社都合退職の場合の失業保険の扱い
特定受給資格者と判定されると、正当な理由のない自己都合退職の場合と比べて、次のような違いがあります。
| 項目 | 会社都合(特定受給資格者) | 正当な理由のない自己都合退職 |
|---|---|---|
| 必要な被保険者期間 | 離職日以前1年間に通算6か月以上でも可 | 離職日以前2年間に通算12か月以上 |
| 待期 | 7日間 | 7日間 |
| 給付制限 | なし | 原則1か月(退職日が2025年4月1日以降) |
| 所定給付日数 | 90日〜330日(年齢・被保険者期間による) | 90日〜150日(被保険者期間による) |
| 国民健康保険料(税)の軽減 | 対象となる場合がある | 原則として対象外 |
所定給付日数(特定受給資格者の場合)
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
たとえば、45歳で被保険者期間が15年の人の場合、自己都合退職なら120日ですが、特定受給資格者なら270日です。1日あたりの金額(基本手当日額)の計算方法は、離職理由によって変わりません。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
国民健康保険料(税)の軽減
神奈川労働局(ハローワーク)の案内では、倒産や解雇などによる離職、または雇止めなどによる離職をした人で、雇用保険受給資格者証の離職理由のコードが11、12、21、22、31、32、23、33のいずれかであれば、国民健康保険料(税)の軽減を受けられるとされています。届け出が必要なため、お住まいの市区町村に確認しましょう。
関連記事:雇用保険受給資格者証とは?もらえる時期・見方・必要な場面を解説
会社都合退職で確認すべき書類
離職理由は、ハローワークが本人の主張や証拠書類、事業主の主張などを確認して判定します。会社都合に当たると考える場合は、次のような書類を確認・保管しておきましょう。
| 書類 | 確認したいこと・役割 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票-2 | 会社が記載した離職理由。実際の理由と違わないか確認する |
| 退職証明書・解雇理由証明書 | 退職の事由や解雇の理由を確認できる(労働基準法により、請求すれば会社が交付する) |
| 解雇予告通知・退職勧奨のメールや書面 | 解雇や退職勧奨があった経緯を示す |
| 給与明細・賃金台帳 | 賃金の未払いや大幅な低下を示す |
| タイムカード・勤怠記録 | 長時間の時間外労働を示す |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 明示された労働条件や、契約更新の約束の有無を確認する |
会社がハローワークに提出する離職証明書には、離職前に本人が氏名を記載し、離職理由などの記載内容も確認するよう案内されています。退職前に記載内容を見せてもらい、納得できない点があれば会社に伝えましょう。
離職票の理由が実際と違う場合
離職票の離職理由が実際の理由と異なる場合は、受給手続きの際にハローワークの担当者に伝えます。離職理由を証明する書類があれば持参しましょう。ハローワークは、本人と事業主の双方の主張や証拠を確認したうえで、離職理由を判定します。
解雇の場合に確認したいこと
会社が労働者を解雇する場合、厚生労働省の案内では、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があるとされています。解雇を告げられたときは、予告の日付や解雇予告手当の有無を確認しておきましょう。なお、解雇予告手当は、雇用保険料の計算のもとになる賃金には含まれません。
会社都合退職に関するよくある質問
Q. 退職勧奨に応じて退職届を出しました。自己都合になりますか?
A. ハローワークの案内では、事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けたことによる離職は、特定受給資格者の範囲に含まれています。手続きの際に経緯を伝え、勧奨を受けたことが分かるメールや書面があれば持参しましょう。
Q. 会社都合か自己都合かは、会社が決めるのですか?
A. 最終的に判定するのはハローワークです。会社が離職票に記載した理由だけで決まるわけではありません。
Q. 会社都合退職の場合、失業保険はいつから受け取れますか?
A. 受給資格の決定後、7日間の待期が終われば、給付制限はありません。原則4週間に1回の認定日に失業の認定を受けると、通常5営業日程度で振り込まれます。
Q. 懲戒解雇された場合も会社都合になりますか?
A. 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は、特定受給資格者には当たらず、給付制限は3か月です。
関連記事:失業手当の条件|対象者・受給要件・対象外になるケースをわかりやすく解説
まとめ|会社都合退職は実際の離職理由で判定される
- 失業保険でいう会社都合退職は、ハローワークが判定する「特定受給資格者」による離職です。
- 倒産・解雇のほか、退職勧奨、長時間労働、賃金の未払いや低下、ハラスメントなども該当することがあります。
- 特定受給資格者は給付制限がなく、被保険者期間は1年間に通算6か月以上で受給資格を得られます。
- 所定給付日数は90日〜330日で、自己都合退職より多くなる場合があります。
- 離職票の記載内容を確認し、離職理由を裏付ける書類を保管しておきましょう。
まずは退職の経緯を整理し、離職票の離職理由と、それを裏付ける書類がそろっているかを確認してみてください。
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参考文献
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
- 神奈川労働局(ハローワーク)「雇用保険受給者のみなさまへ」(R7.4)
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
- 神奈川労働局「労働保険料の算定基礎となる賃金早見表」
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・判断基準は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。