「会社の都合で辞めることになったのに、離職票には自己都合と書かれていた」「自分のケースは会社都合になるのか分からない」。退職の場面では、こうした不安を抱える方が少なくありません。
雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)では、会社都合かどうかによって、受け取り始める時期や日数が変わります。この記事では、会社都合の退職に当たるかを判断するポイントをケース別に整理し、退職前から受給までの流れと、そろえておきたい書類を解説します。
この記事のポイント
- 会社都合の退職かどうかは、ハローワークが「特定受給資格者」に当たるかを判定して決まります。
- 会社の状況、賃金や労働時間、職場の人間関係、契約の更新などの理由で離職した場合に、会社都合と判定される可能性があります。
- 会社都合になると、給付制限がなくなり、所定給付日数が多くなる場合があるなど、失業保険の扱いが変わります。
- 離職票の理由が実際と違う場合は、ハローワークでの手続きの際に伝え、証拠となる書類を提出します。
- 退職の経緯を示すメールや書面、給与明細、勤怠記録は、退職前から保管しておきましょう。
会社都合の退職かどうかは誰が決める?
「会社都合」「自己都合」は一般的な呼び方です。失業保険の手続きでは、倒産や解雇などで再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職した人を「特定受給資格者」として扱い、これがいわゆる会社都合の退職に当たります。
判定するのは会社ではなく、ハローワークです。ハローワークは、受給資格を決定する際に、本人の主張、証拠書類、事業主の主張などを確認したうえで離職理由を決定します。会社が離職票に「自己都合」と記載していても、それだけで決まるわけではありません。
ポイント:大切なのは、退職届を誰が出したかではなく、実際にどのような理由で離職することになったかです。
自己チェック|会社都合の退職に当たる可能性があるか
ハローワークの「特定受給資格者の範囲」をもとに、離職の理由を4つの観点で整理しました。当てはまるものがあれば、会社都合と判定される可能性があります。
会社の状況による離職
- 会社が倒産した(破産、民事再生、会社更生などの手続の申立てや手形取引の停止など)
- 事業所が廃止された、または移転して通勤が困難になった
- 事業所で大量の離職があった(大量雇用変動の届出、被保険者の3分の1を超える離職など)
賃金・労働時間による離職
- 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった
- 賃金がそれまでの85%未満に低下した
- 離職直前6か月間に、3か月連続で45時間、いずれか1か月で100時間、または連続した2か月以上の平均で80時間を超える時間外労働があった
- 会社の責任による休業が3か月以上続いた
職場の環境・会社の対応による離職
- 解雇された(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
- 会社から退職するよう勧奨を受けた
- 上司や同僚からの嫌がらせ、著しい冷遇、セクシュアルハラスメントなどを受けた
- 妊娠・出産・育児・介護に関して不利益な取扱いを受けた
- 採用時に明示された労働条件が、実際と著しく違っていた
- 職種転換などの際に、必要な配慮がされなかった
- 事業所の業務が法令に違反していた
契約の更新による離職
- 有期契約が更新され3年以上働いていたのに、契約が更新されなかった
- 契約を結ぶ際に更新されると明示されていたのに、更新されなかった
いずれの項目にも細かな判断基準があります。当てはまりそうな場合は、ハローワークで具体的な事情を伝えて確認しましょう。
ケース別|会社都合の退職になる?
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 業績悪化で、会社から退職を打診され、応じて退職届を出した | 事業主から退職の勧奨を受けたことによる離職として、会社都合と判定される可能性がある |
| 会社が臨時に募集した希望退職に応募した | 退職の勧奨に当たる可能性がある。ただし、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などへの応募は該当しない |
| 毎月90時間の残業が2か月続き、体調を崩す前に退職した | 連続した2か月以上の平均で80時間を超える時間外労働に当たり、会社都合と判定される可能性がある |
| 事業所が遠方に移転し、通勤できなくなって退職した | 事業所の移転による通勤困難として、会社都合と判定される可能性がある |
| 契約社員として更新を重ねて4年働いたが、次の更新がなかった | 3年以上の更新後の雇止めとして、会社都合と判定される可能性がある |
| 重大な規律違反で懲戒解雇された | 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇として、会社都合には当たらず、給付制限は3か月 |
会社都合に当たらない場合でも、体調不良や家族の介護など正当な理由のある自己都合退職や、更新を希望したのに契約が更新されなかった場合などは「特定理由離職者」として、給付制限がかからないことがあります。
関連記事:失業手当の条件|対象者・受給要件・対象外になるケースをわかりやすく解説
会社都合の退職になると変わる5つのこと
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 1. 給付制限がない | 正当な理由のない自己都合退職では原則1か月の給付制限があるが、会社都合では7日間の待期の後から支給の対象になる |
| 2. 必要な被保険者期間が短い | 離職日以前1年間に通算6か月以上で受給資格を得られる(自己都合は2年間に通算12か月以上) |
| 3. 所定給付日数が多くなる場合がある | 年齢と被保険者期間に応じて90日〜330日(自己都合は90日〜150日) |
| 4. 国民健康保険料(税)が軽減される場合がある | 倒産・解雇・雇止めなどで離職した人が対象。届け出が必要 |
| 5. 受給期間内に受け取りきる計画が必要 | 所定給付日数が多い分、受給期間(330日の場合は1年と30日)内に受け取りきれるよう、早めの手続きが大切 |
たとえば35歳で被保険者期間が8年の人の場合、自己都合退職なら所定給付日数は90日ですが、会社都合なら180日です。1日あたりの金額の計算方法は、離職理由によって変わりません。
関連記事:失業保険期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説
退職前から受給までの流れ
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職を打診された・決まった | 経緯をメールや書面、メモで記録しておく。解雇の場合は、予告の日付や解雇予告手当の有無を確認する |
| 退職前 | 会社がハローワークに提出する離職証明書の記載内容(離職理由など)を確認する。必要に応じて、解雇理由証明書や退職証明書を請求する |
| 退職後 | 会社から離職票(-1、-2)を受け取り、記載された離職理由を確認する |
| ハローワークでの手続き | 求職の申込みと離職票の提出をし、離職理由について自分の認識を伝える。証拠となる書類を提出する |
| 受給資格の決定後 | 雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の離職理由を確認する |
厚生労働省の案内では、会社は、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合、すぐに交付しなければならないとされています。また、解雇する場合は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。
関連記事:雇用保険受給資格者証とは?もらえる時期・見方・必要な場面を解説
離職票の理由が「自己都合」になっていたら
会社が記載した離職理由が、実際の理由と違うと感じる場合は、次のように対応します。
- 離職票-2に記載された離職理由と、会社が記入した具体的な事情を確認します。
- 実際の経緯を時系列で整理し、それを裏付ける書類をそろえます。
- ハローワークで受給手続きをする際に、担当者に離職理由が実際と違うことを伝え、書類を提出します。
- ハローワークが、本人と事業主の双方の主張や証拠を確認して、離職理由を判定します。
注意:事実と異なる主張をして給付を受けることは不正受給に当たります。実際の経緯を、書類にもとづいて正確に伝えましょう。
そろえておきたい書類
| 離職の理由 | 証拠になりやすい書類の例 |
|---|---|
| 退職勧奨・解雇 | 退職を勧められたメールや書面、解雇予告通知、解雇理由証明書 |
| 賃金の未払い・低下 | 給与明細、賃金台帳、雇用契約書 |
| 長時間労働 | タイムカード、勤怠記録、業務日報 |
| ハラスメント | やり取りの記録、相談した記録 |
| 労働条件の相違 | 求人票、労働条件通知書、雇用契約書 |
| 契約の不更新 | 雇用契約書(更新の有無や更新回数が分かるもの) |
| 事業所の移転 | 移転の通知、通勤経路や所要時間が分かるもの |
どの書類が必要になるかは、ケースによって異なります。手元にあるものを持参し、ハローワークで確認しましょう。
会社都合の退職に関するよくある質問
Q. 会社から「自己都合で辞めてほしい」と言われました。どうすればよいですか?
A. 退職するよう勧められた経緯は、メールや書面、日時を記したメモなどで記録しておきましょう。ハローワークは、退職の勧奨による離職を特定受給資格者の範囲に含めています。手続きの際に経緯を伝えることができます。
Q. 会社都合と判定されたかは、どこで確認できますか?
A. 受給資格の決定後に交付される雇用保険受給資格者証の離職理由欄で確認できます。分からない場合は、ハローワークに確認しましょう。
Q. 会社都合の退職でも、失業保険の条件を満たさないことはありますか?
A. あります。離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることに加えて、働ける状態で求職していること(失業の状態)が必要です。病気やけがですぐに働けない場合は、その間は受け取れません。
関連記事:失業保険の計算|受給額の計算方法・給付日数・金額が変わる条件を解説
まとめ|会社都合の退職は経緯と書類で判断される
- 会社都合の退職かどうかは、ハローワークが特定受給資格者に当たるかを判定して決まります。
- 会社の状況、賃金・労働時間、職場環境、契約の更新などの理由で離職した場合は、会社都合となる可能性があります。
- 会社都合になると、給付制限がなくなり、必要な被保険者期間が短く、所定給付日数が多くなる場合があります。
- 離職票の理由が実際と違う場合は、ハローワークで伝えて証拠書類を提出します。
- 退職の経緯を示す書類は、退職前から保管しておきましょう。
まずは自己チェックで当てはまる項目がないか確認し、退職の経緯と手元の書類を整理しておきましょう。
退職前の給付制度の確認はRE:STARTの無料相談へ
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参考文献
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
- 厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
- 神奈川労働局(ハローワーク)「雇用保険受給者のみなさまへ」(R7.4)
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・判断基準は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。