病気やけがで休職が長引きそうなとき、「傷病手当金はいつまで受け取れるのか」は気になるポイントですよね。
健康保険の傷病手当金は、同じ病気やけがについて、支給を開始した日から通算して1年6か月受け取れます。ただし「通算」の数え方には決まりがあり、途中で出勤した日や給与が出た日の扱いによって、受け取れる期間の終わりが変わります。この記事では、傷病手当期間の数え方と、退職後も受け取る場合の注意点を解説します。
この記事のポイント
- 傷病手当金の支給期間は、同一の病気やけがについて、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
- 支給開始日は、連続する3日間の待期が終わった後の4日目です。
- 令和4年1月1日からは通算化され、出勤などで支給されなかった日は、支給期間から減らない扱いになっています。
- 給与の一部が出て差額が支給された日は、支給期間が減ります。
- 退職後の継続給付は、いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても受け取れません。
傷病手当金の期間は「支給開始日から通算1年6か月」
協会けんぽの案内では、傷病手当金の支給期間は、同一の病気やけがについて、支給を開始した日から通算して1年6か月とされています。
「通算して」とは、カレンダー上で1年6か月が過ぎたら終わりという意味ではなく、実際に傷病手当金が支給された日数を合計して数えるという意味です。途中で仕事に復帰した期間などがあっても、支給された日数の合計が1年6か月分に達するまでは、再び働けなくなった日について支給の対象になります。
ポイント:傷病手当金の期間は「1年6か月分の日数」を受け取るまで、と考えると分かりやすくなります。
関連記事:傷病手当金|支給条件・金額・期間・申請方法をわかりやすく解説
傷病手当期間の数え方
ステップ1:支給開始日を確認する
傷病手当金は、病気やけがで仕事を休んだ日が連続して3日間(待期)あった後、4日目以降の仕事に就けなかった日から支給されます。この4日目が支給開始日です。
待期には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
ステップ2:1年6か月分の日数を確定する
厚生労働省の事務連絡(Q&A)では、支給開始日から暦にしたがって1年6か月間の日数を計算し、その日数を支給期間として確定するとされています。示されている例は次のとおりです。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 仕事に就けなくなった日 | 令和4年3月1日 |
| 待期 | 3月1日〜3日の3日間 |
| 支給開始日 | 3月4日 |
| 支給期間 | 令和5年9月3日までの549日間 |
この例では、549日分の傷病手当金が支給されるまで、同じ病気について支給を受けられることになります。
ステップ3:支給された日数を差し引いていく
支給期間は、実際に傷病手当金が支給された日数分だけ減っていきます。支給されなかった日がある場合は、その分が後ろに繰り越されます。
支給期間が減る日・減らない日
どの日が支給期間から差し引かれるかは、その日に傷病手当金が支給されたかどうかで決まります。厚生労働省の事務連絡をもとに整理すると、次のとおりです。
| その日の状況 | 支給期間 | 理由 |
|---|---|---|
| 休業して給与が出ず、傷病手当金が全額支給された | 減る | 支給された日のため |
| 給与などが一部支払われ、差額の傷病手当金が支給された | 減る | 一部でも支給された日のため |
| 出勤して働いた | 減らない | 傷病手当金が支給されない日のため |
| 給与が傷病手当金の額以上に支払われ、傷病手当金が支給されなかった | 減らない | 併給調整で不支給となった日のため |
| 障害年金や出産手当金との調整で、傷病手当金が支給されなかった | 減らない | 併給調整で不支給となった日のため |
注意:給与が一部でも支払われて「差額」の傷病手当金を受け取った日は、支給期間が1日分減ります。休業中に給与が一部支払われる場合は、残りの日数を意識しておきましょう。
具体例:途中で一時的に復職した場合
たとえば、3か月休業して傷病手当金を受けた後、2か月間復職し、同じ病気が悪化して再び休業したケースを考えます。
| 期間 | 支給期間への影響 |
|---|---|
| 最初の3か月の休業 | 支給された日数分、支給期間が減る |
| 2か月間の復職 | 傷病手当金が支給されないため、支給期間は減らない |
| 再び休業 | 残りの日数分について、再び支給の対象になる |
通算化により、復職していた2か月間は支給期間を消費しません。そのため、支給開始日からカレンダー上で1年6か月を過ぎていても、残りの日数があれば受け取れます。
令和4年1月1日の改正で「通算」になった
厚生労働省によると、傷病手当金の支給期間は、令和4年1月1日から通算化されました。
| 内容 | |
|---|---|
| 改正前 | 支給開始日から暦の上で1年6か月が過ぎると、途中で出勤した期間があっても支給期間が終わっていた |
| 改正後(令和4年1月1日〜) | 支給開始日から通算して1年6か月。出勤などで支給されない期間がある場合は、その分を繰り越して支給を受けられる |
令和3年12月31日の時点で、支給開始日から1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が始まったもの)も、通算化の対象とされています。
別の病気やけがの場合の期間
傷病手当金の支給期間は、病気やけがごとに数えます。厚生労働省の事務連絡では、複数の病気などがある場合は、それぞれの病気ごとに支給期間を判断し、傷病手当金が支給された日数分だけ、それぞれの支給期間が減るとされています。
同じ病気が再発した場合に同一の傷病として扱われるかどうかは、医師の意見などをもとに加入している健康保険が判断します。
退職後も受け取る場合(資格喪失後の継続給付)
退職すると健康保険の被保険者資格を失いますが、次の2つの条件を満たしていれば、退職後も引き続き、残りの期間について傷病手当金を受け取れます。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険の期間を除く)が継続して1年以上あること
- 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
退職後の期間で気をつけたいこと
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 退職日に出勤しない | 協会けんぽは、退職日に出勤した場合は継続給付の条件を満たさず、退職日の翌日以降は支払われないと案内している |
| 一度働ける状態になると終わる | いったん仕事に就ける状態になると、その後また働けなくなっても、継続給付は受けられない |
| 期間は在職中から通算 | 在職中に受けた日数も含めて、支給開始日から通算1年6か月が上限 |
| 老齢年金との調整 | 老齢厚生年金などを受けるようになると原則として支給されない(年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低い場合は差額を支給) |
在職中は、復職した期間を挟んでも残りの日数を受け取れますが、退職後の継続給付では、働ける状態になった時点で終わります。退職後に復職のような形で繰り越して使うことはできない点に注意しましょう。
また、任意継続被保険者である期間中に新たに発生した病気やけがについては、傷病手当金は支給されません。
関連記事:退職給付金を受け取れる条件は?対象制度・必要書類・申請時期を解説
期間に関する手続きの注意点
申請は期間ごとにまとめて行う
傷病手当金は、休業した期間について後から申請します。協会けんぽは、給与の支払いの有無について事業主の証明が必要になるため、1か月単位で給与の締切日ごとに申請することを勧めています。退職後の期間を申請する場合の記入方法は、記入例や加入先の案内で確認しましょう。
時効は2年
傷病手当金を受ける権利は、仕事に就けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効により消滅します。支給期間が残っていても、申請しないまま2年が過ぎた日の分は受け取れなくなります。
1年6か月が終わった後に確認したいこと
支給期間が終わった後も働けない状態が続く場合や、退職後の生活を考える場合は、ほかの制度も確認しておきましょう。
| 状況 | 確認したいこと |
|---|---|
| 退職していて、回復後に仕事を探したい | 雇用保険の基本手当(一般に失業保険と呼ばれる給付)の受給期間の延長(引き続き30日以上働けない場合、最大3年間延長できる) |
| 退職していて、働ける状態になった | 受給期間内に、ハローワークで基本手当の手続きをする |
| 在職中で、まだ働けない | 勤務先の休職制度や、今後の働き方について会社と相談する |
基本手当と傷病手当金は、前提となる状態が反対のため、同じ期間に両方を受け取ることはできません。傷病手当金を受けている間に、基本手当の受給期間の延長を申請しておくと、回復後に基本手当の手続きができます。
関連記事:失業保険の期間はいつまで?給付日数・受給期限・延長できるケースを解説
傷病手当期間に関するよくある質問
Q. 有給休暇を使った日は、支給期間に含まれますか?
A. 待期の3日間には有給休暇も含まれます。待期が終わった後に有給休暇を使って給与が支払われた日は、傷病手当金が支給されない(または差額のみ支給される)日になります。全く支給されなかった日は支給期間から減りませんが、差額が支給された日は減ります。
Q. 支給開始から1年6か月たちましたが、途中で出勤した日があります。まだ受け取れますか?
A. 令和4年1月1日以降は通算化されているため、出勤して支給されなかった日があれば、その分の日数が残っています。同じ病気で引き続き働けない場合は、残りの日数分について支給の対象になります。
Q. 退職後、少し体調がよくなって短期間働きました。その後また働けなくなったら受け取れますか?
A. 協会けんぽの案内では、退職後の継続給付は、いったん仕事に就ける状態になると、その後また働けなくなっても受けられないとされています。
Q. 残りの支給期間はどこで確認できますか?
A. 加入している健康保険に問い合わせると確認できます。支給決定の通知などとあわせて、受け取った期間を記録しておくと安心です。
関連記事:退職給付金とは?失業保険・傷病手当金など対象制度をわかりやすく解説
まとめ|傷病手当期間は「通算」の数え方を押さえよう
- 傷病手当金の期間は、同一の病気やけがについて、支給開始日から通算して1年6か月です。
- 支給開始日は待期3日間の後の4日目で、そこから暦にしたがって1年6か月分の日数が決まります。
- 出勤した日や併給調整で支給されなかった日は減らず、差額が支給された日は減ります。
- 退職後の継続給付は、退職日に出勤しないことと、働ける状態になると終わる点に注意が必要です。
- 時効は2年のため、支給期間が残っていても早めに申請しましょう。
まずは支給開始日と、これまでに受け取った期間を確認し、残りの日数を加入している健康保険に問い合わせてみてください。
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参考文献
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
- 厚生労働省「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&Aの内容の追加等について」(令和3年12月27日事務連絡)
- 協会けんぽ「傷病手当金を受けている方へ」(年金との調整)
- 協会けんぽ山形支部「健康保険給付の時効」
- 兵庫労働局「受給期間の延長手続き」
※確認日:2026年10月2日。制度の内容・期間・期限は改正されることがあります。最新の情報は各公的機関のページでご確認ください。